……まただ。 また気づいたらここに来ていた。 ――息が白い。 ここに来れば、あったかいことを僕は知ってる。だからきっとここにいる。 ――首元が寒い。 ほら戸を開ければいいじゃないか。 無意識下の自分に責任なんて持てやしないよ。 自分の中で葛藤を続けていたら、戸が開いた。 自動で開いたのではなく(そんな戸があるわけない)自分の手によって開けられた。無意識下の自分だ。 中にはあったかい布団であったかそうに寝ている名前がいた。 僕もあのまま布団の中にいればあったかかったのに。もうあの布団は冷え切ってしまったことだろう。 無意識下の自分を少しだけ恨んだ。 「……伊賀崎?」 気づけば僕は名前の布団に潜り込んで、名前の腰に抱き着いていた。ほら、これも無意識下の自分。 名前もよく僕だと分かったな。 …潜り込むのは僕くらいか。 何度も言うが僕のせいでは無い。無意識下の僕がやったことだ。 「まだ始まったばっかなのになー…」 そう言って名前は小さくため息をついて、僕の頭を抱えるように抱きしめてくれた。 ――あったかい。 始まったばかり、というのはジュンコたちの冬眠のことだ。 冬になってジュンコやきみこは冬眠を始めた。彼女達にとっては当たり前のことだった。 取り残された僕は寂しくて、こうして無意識下の自分が生まれる。 毎晩、とは言わないが高い頻度で僕は名前のところに通っていた。 どうして名前なのかはわからない。 「伊賀崎は寂しくないからな、俺がいるからな」 そう言って名前はまた僕を強く抱きしめる。 ジュンコたちがいなくて寂しい。 でも名前がいるから寒くはない。 結局、無意識下の自分も僕なのだ。 2009.10.23 |