正直、驚いた。
「好き」と言われて、とりあえず先輩としての意味かと聞いた。そうしたら「違います」と怒鳴るように言われた。


「俺は、本当に好きなんです…」


下を向いているけれど繋いでいる手は離さずに作兵衛はそう言った。見える耳は赤くなっていた。
どうして俺なんだろう。
不破のときもそう思った。たくさんの人間の中でどうして俺を見つけて、俺に惹かれたんだろう。


「なんで俺なんだ?」
「え?」

思わず俺は作兵衛に聞いてしまう。作兵衛は驚いて俺を見る。あまりにも失礼な発言だっただろうか。
あ、えっと、と作兵衛は答えようと繋いでいない方の手を動かしながら言葉を出そうと頑張っている。なんか悪いことした。



「作兵衛」


もう良い、と言おうとしたときだった。作兵衛は覚悟を決めたように俺を見た。不覚にもドキッとした。



「名前先輩だったんです。理由なんて知りません」



カアッと顔が赤くなっていくのがわかる。なんだこれ、なんでこんな。
好きと言われたのはこれが初めてではない。不破のもそうだし、その前にも数回ある。けれどその度にどうでもいいという怠慢な感情が出てきていた。
なんだこれ。ちょっと、俺はこんなの知らない。


「名前先輩…?」
「ちょっと待って。整理するから待て」

ぐるぐるして頭が痛くなってきた。どうして作兵衛に言われたらこんなに混乱しているんだ。…作兵衛に言われたから?いやそんなことはないはず。
ああもう誰か教えてくれ!


「…先輩、無理しなくていいです。俺なら大丈夫ですから」
「違うっ!」





「違う、無理なんじゃなくて、真剣に考えてんだ。無理だったらとっくのまに言っている。作兵衛とのことだから真剣に考えて…」


自分が何を言ってるかわけわからなくなってきた。こんな話をしていても一応進んではいたんだが、作兵衛が急に足を止めた。
どうしたのだと作兵衛を見ると、顔を真っ赤にした作兵衛が俺を見ていたのだ。


「…先輩、それは期待しちゃいます」
「期待…?」
「名前先輩は俺のこと特別に思ってくれてるって…っ…」



瞬間、俺は作兵衛を抱きしめていた。
なんだそういうことなのか。何となく納得がいった気がした。
先輩?と作兵衛が戸惑った声で俺を呼ぶ。







「やっと分かった。俺は作兵衛が好きなんだ」




随分と遠回りをしたけれど


(思えば、この俺が委員会に入ろうなんて思ったのも作兵衛が理由だった。最初から作兵衛は俺にとって特別だったのだ)



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