「ったく、夜中に誰か来たと思ったら喧嘩ぁ?馬鹿じゃないの?」
「すみません…」
「そんな馬鹿は文次郎と留三郎だけで良いんだから」
「ホント、すんません」


保健室に行くと善法寺先輩は薬棚の整理をしていた。そこにボロボロの俺たちが入ったもんで、その理由が喧嘩(らしい)と来たもんだから、善法寺先輩はぷりぷり怒りながら治療を始めた。先輩ちょっと可愛い。

「苗字くんはまだ良いけどね、不破くんなんてひどいじゃないか!背中を強く打ち付けて」
「はは…すみません」
「もう。深くは聞かないけどね、あんまり馬鹿なことはしないでよ?特に苗字くん!」
「はいっ!」
「君は二度目だよ?留三郎が嘆く」
「俺も用具委員です」
「あ、そうだったね」


2、3日はおとなしくしてるんだよ、と言われて保健室から追い出された。あれでいて善法寺先輩はとても俺たちのことを心配してくれているのだから多少の手荒さは気にしない。
さて寝るか、と思ったら腕に違和感。作兵衛が俺の寝着の裾を引っ張っていた。

「作兵衛?」
「二度目って、何ですか?」
「ん?ああ、俺が塀を壊したことだよ。いつだっけ、兵助」
「2年だよ」
「えぇぇっ!?」

あの時は先生に怒られて、それから用具委員に怒られたなあ。
笑っていると、作兵衛がもう一回裾を引っ張った。

「どうした?」
「あ、あの…」

どうしたのだろうか。ぷるぷる小動物みたい、可愛い。
裾を掴む力が強くなった。何かに怯えてる?

「何か怖いことでもあったか?」
「や、そんなことはっ!」
「あったよな」

隣で兵助が言う。え、あったっけ?
何も怖くありませんでした!と作兵衛がむきになって言う。そうは言ってるけど、何かあったようにしか見えないんだが。うーん、このまま帰しても良いけど…。


「一緒に寝る?」
「へ?」
「や、ほら作兵衛ぷるぷるしてるし」
「どういう意味ですか!」

一緒に寝よう?なんて言ってみれば作兵衛は案外あっさり頷いた。よし、これで俺の心配のタネが一つ減る。

「あ、兵助」
「俺はハチの部屋に泊まるから良いよ」
「ありがと」



じゃあ寝るか!
作兵衛の手を引いて歩きだそうとしたとき、不破が俺を呼んだ。皆の表情が一瞬強張った気がした。


「何?」
「ちょっとだけ、話良いかな」
「……良いよ。作兵衛、先に行ってて」








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