「おー…修羅場だ」
「この部屋で酒盛りしてたんですね。酒瓶と臭いがすごいです」
「わ、障子が壊れてる。直さなきゃ」



部屋に散乱している酒瓶と充満している酒の臭いで少し気分が悪くなった。それを見て、先輩を変えてしまったのは酒のせいだと理解した。でも先輩は酒に滅法強いと聞いていたから少し心配だけど、この部屋を片付けてから聞くことにする。

「あれ、かっちゃんがいない」
「かっちゃん?」
「掛矢のかっちゃん」
「……久々知先輩なら知ってるんじゃないですか?」
「そうかも、明日聞いてみよ」

多分酒に酔った名前先輩が何をするかわからないから久々知先輩が隠したんだと思う。あれを振り回されたらたまったもんじゃない。
しかし、この酒瓶の量といったら…。


「あーあ、全部無くなっちゃった」
「これ全部先輩のですか」
「うん。あー、どうしよう」
「早く片付けて寝ましょうよ」
「…うん」

正直、眠たいのだ。
あ、三之助と左門に何も言ってないけど、まあ良いか。たいした問題にはならないだろう。
とりあえず酒瓶を隅に寄せて布団を敷ける場所を確保して、それから布団を敷いた。
じゃあ寝るか、と先輩が言ったので布団に潜り込んだ。ひんやりする。


「作兵衛、迷惑かけたな」
「……いえ、そんな」
「何があったかさっぱりだけど、作兵衛が怯えた顔してたから何かしちまったんだよな、俺」
「…怯えてないです」
「はは、そっか」

いや、怯えていた。殺気を真正面に受けて…うう、思い出しただけでも鳥肌が。
名前先輩を待つまで、久々知先輩に何があったかを聞いた。それで名前先輩と不破先輩の間で何か嫌なものがあったことが分かった。少しすっきりした顔で帰ってきた名前先輩を見て、解決したのだと分かって安心した。



「……ね、作兵衛」
「何ですか?」
「こっちおいで」

掛け布団を浮かせて、おいで、と俺を呼ぶ。先輩には俺がそこまで怯えているように見えたのだろうか。
いや違う。
名前先輩は寂しそうな表情をしていたのだ。どうして先輩がこんな表情をしているのだろうか。
もそもそと俺は先輩の布団に入った。すると先輩は俺を抱きしめた。


「先輩…?」
「作兵衛は最近素直だ」
「…俺はいつも素直です」
「うん、そうだな」

「明日、2人で町に行かないか?」
「町、ですか」
「酒を買わなきゃなんないし、髪紐も買いたいな。どう?」
「……良いですよ」





心情


(先輩、寝るの早い…!)



2010.01.03


シリアスは多分ここまで。次回は委員長が頑張ります。



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