苗字先輩…じゃなかった、名前先輩のオススメの甘味処に向かって、まるで遠足気分のように歩く俺ら。 食満先輩は喜三太としんべエと手を繋いでいて、名前先輩は平太と手を繋いでいる。 そんな微笑ましい様子を一歩下がって俺が見ている。 「しんべエ、ほどほどにするんだぞ」 「が、頑張ります…」 「俺の持ち金が無くならない程度にな」 「お、苗字のおごりか?」 「留三郎先輩にはおごりません」 ああやって楽しそうにしてる名前先輩だけど、本当は色々あるんじゃないかと思っている。 だってこないだの不破先輩とちょっと張り合ったあの日。俺が帰ったあとに何かあったに違いない。 次の日、食堂で見かけたとき5年生はあのメンバーで食べていたんだけど、名前先輩と不破先輩は遠い位置にいて(たまたまかもしれないけど) 一度も会話をしていなかったんだ。 どうも俺のせいにしか思えない。 孫兵に頼んで何があったか竹谷先輩に聞いてもらおうか。 「作兵衛?」 名前を呼ばれて顔を上げると、皆立ち止まって俺を見ていた。 え、なに、俺何かした? 「元気無い?疲れてた?」 「や、大丈夫です!」 どうやら俺が下を向きながら歩いてたことに問題があったらしい。 大丈夫、と言っても食満先輩は心配してるように眉を下げて俺を見てる。1年も心配そうに見てるし。 でも名前先輩だけ違って、笑顔で俺を見た。 その笑顔にどきどきしたのは気のせいだと思いたい。 「そっか!じゃ、行こうか!」 そう言って平太と繋いでないほうの手を俺に向けて差し出す。 ああもうこの人はどうしても俺を子供扱いしたいらしい。 いつもなら遠慮するけど、今だけは甘えておこうかと思う。 そのほうが安心する気がするんだ。 「お、作兵衛珍しい」 「た、たまには俺だって素直になります」 「留三郎先輩、羨ましいでしょー!」 「うるせぇっ!」 名前先輩の手はあったかかった。 → |