不破先輩が来てからこの場の空気は悪くなった。悪いって言うか、不破先輩から出されているオーラが恐ろしすぎる…。
苗字先輩ははっきり言って空気が読めない。だからきっとこのオーラには気づいてない。
未だ苗字先輩は俺を抱きしめていて(ここまでくると、玩具を抱きしめて離さない子供のようだ)
不破先輩のオーラは更に恐ろしさを増している。
もちろん原因は俺だ。そんなの分かりきっている。
俺が苗字先輩の近くにいることが、不破先輩は気に食わないんだ。



「……ねえ名前、この問題わからないんだけど」
「ん?どこ?」


諦めたのか、不破先輩は本題に入った。
やっぱり苗字先輩は頭良いんだ…!
教えるの苦手そうだったけど一生懸命教えてくれたし、俺もちゃんと分かったし!

……ん?
不破先輩って苗字先輩のこと苗字で呼んでたよな。
さっき名前で呼んでなかったか?

ニヤリと意地悪く不破先輩は俺に向かって笑った。
やっぱり気のせいじゃなかった!
苗字先輩には意地悪く笑った不破先輩が見えていない。
不破先輩は俺に見せつけているんだ。
な、何か悔しい…。
このまま退いてしまっては駄目な気がする。きっとこれから先も俺は不破先輩以上、苗字先輩に近づけない。




「……名前先輩…っ」


、よし。呼べた。
案外あっさり呼べたことに少し驚いたが結果としては上出来だ。
不破先輩は変わらず話しているのできっと不破先輩には聞こえなかったんだろう。ちょっと残念だ。多分。

話し続けている不破先輩に対して、苗字先輩は何も喋らずにいる。
どうしたのだろうか、と声をかけようとした時、俺を抱きしめる力が強くなった。


「え、先輩?」
「……おま…それは反則だって…」
「先輩、」
「作兵衛」
「、はい」
「もっかい呼んで?」
「……名前先輩…?」


言われたままにもう一度呼んでみると、先輩は顔を隠すように俺を抱きしめた。
一瞬見えた先輩の顔は赤かった気がする。







「これからもそう呼んでくれな、作兵衛」




笑顔の声

(はい、なんて答えれば名前先輩はまた嬉しそうに笑ったんだ)
(だけど面白くない人だっているんだよ)



2009.11.03



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