「失礼すっぞー」 3年長屋をうろうろしてたら、伊賀崎に声をかけられた。きっと作兵衛を抱えているからだと思う。 何で俺がうろうろしてたかって、部屋が分からなかったから。ちょうど良いと思い、伊賀崎に作兵衛の部屋を聞いた。助かった。 そうして辿り着いたのは作兵衛と、あの有名な迷子コンビの3人部屋。 へえ、3人部屋なんだ。 戸を開けると、迷子コンビが座って談笑していた。俺が入ってきて驚いたらしく、今は何も話していないが。 「さ、作兵衛?」 「ああ。寝てんだ。布団敷いてくれるか?」 「はい!」 俺がそう頼むと慌てるように、えーと…髪がサラサラしてる方が布団を敷いてくれた。 そしてその布団の上に作兵衛を寝かせる。 よく起きなかったな…。 「えっと…苗字先輩、ですか?」 「ん。そうだよ」 「最近、用具委員会に入った?」 「うん」 作兵衛が起きるまで俺は居座る気満々なので、布団のすぐ横で俺は胡座をかいた。 そんな俺に、でかい方が話しかけてきた。 「ごめん。俺、お前らの名前知らないんだ」 「次屋三之助です」 「神崎左門です」 「ありがとう。苗字名前だ」 次屋三之助に神崎左門か。でかいのが次屋。うん、覚えた。 二人はまじまじと俺を見てくる。え、そんな見られると困るんだけど。 「先輩ですよね、壊し屋」 「ああうん。そうらしい」 「らしいって」 「三之助と同じだな!」 「どういうことだよ、左門」 この会話を聞いていると、次屋が無自覚迷子らしい。 …って、あれ?これ遠回しに俺も無自覚って言われてる? 「先輩は何で今まで委員会に入らなかったんですか?」 「え?面倒だったから」 「じゃあ何で今になって入ったんですか?」 「後輩が可愛かったから」 俺がそう答えると、何それ、と言うように二人は口を開けたまま俺を見る。 「後輩なら今までもいたじゃないスか」 「えー、あー、そうなんだけど…」 あー、うー、と言葉を濁らせる。何と言えば良いのだろうか。改めて言うとなると何か恥ずかしいな。 「今年の1年が入ってきて、先輩として頑張る下級生見てたら触発されたんだよ」 お前らも含めて、な。 そう言って頭を撫でてやる。 ずっと委員会なんて面倒なものだと思ってた。 勉強する時間減るし、何度も言うけどやっぱり面倒だった。 今年も委員会なんて絶対やってなんかやるもんか、と思ってた。 だけど見ちゃったんだ。 まだ3年生だと言うのに一生懸命先輩してるヤツを。 俺はソイツを見て、俺が先輩しなきゃなって思ったんだ。 「え、誰?」 「3年生?」 見当がつかないのか顔を見合わせる二人。その行動が可愛くて思わず笑みがこぼれた。 「頑張ってるもんな、作兵衛」 「………いつから」 すぐ隣の布団の山に向かって言ってやると、どうしたのか顔を真っ赤にした作兵衛が布団から顔を出した。 とっくの前に起きてるのは知ってた。知ってて話してみたんだ。 作兵衛が起きた時から、と答えたら、意地悪、と布団が呟いた。 「作兵衛いつの間に起きたんだよ」 「うっせーな、俺が起きてようが寝てようが関係ないだろ」 「関係ある!」 「どんな」 「……」 「分からねえのかよ!」 仲良いなー。 作兵衛のツッコミがある程度終わったのを見て、落ち着けという意味で名前を呼んでやる。 「…あ、あ!ありがとうございました!」 「へ?何が?」 「えっと、部屋まで運んでもらったし、その、」 「膝まくら?」 「作兵衛、苗字先輩に膝まくらしてもらったの?」 「ばっ…先輩!!」 「あっはは」 そうじゃなくて、と顔を真っ赤にして作兵衛は言う。 じゃあ何?と言うと少し怯まれた。あ、言い方まずった。 「せ、先輩が委員会に入ってくれて、です」 「…っ作兵衛ぇ!」 「うわっ」 「俺、委員会入って良かった」 面倒くさいとか言いながら逃げていたけど、こんな充実した時間が得られるなんて! どれもこれも作兵衛のおかげ! 「作兵衛がいてくれたからだ、ありがとう」 感謝の意味を込めての抱擁。作兵衛が固まってる気がするけど気にしないことにする。 「作兵衛、照れてるー」 「苗字先輩、大胆スね」 「おめえら黙れ!!」 俺の腕を無理矢理ほどいて、作兵衛は二人に飛び掛かった。 二人は楽しそうに作兵衛の攻撃を避ける。 時折見える作兵衛の顔が赤いから、きっとあれは。 「……可愛いな」 照れ隠し (お前ら飯はー?) ((まだです!)) (じゃあ一緒に食おうぜ) ((はい!)) 2009.10.06 ウチは作兵衛をどうしたいんだろう(´・ω・`) |