オーラルはどうにか乗り越えられました。巣山くんが教科書貸してくれたおかげです。 その借りた教科書を返すために再び私は1組にやって来ました。もう巣山くんの席は覚えたからキョロキョロしなくていい、なんて思いながら廊下を歩いていると前の方に見慣れた人がいます。 あれ?巣山くん? 「す、やまくん」 「ん?お、おお苗字」 「どこか行くの?」 「昼飯確保のために購買に……苗字こそどうした?って、教科書か」 お財布を片手に巣山くんは私が抱えている教科書を見てそう言う。 全然喋れないや。別にいいんだけどね?巣山くんの声聞くの好きだから。 「えと、机の上置いといてくれっか?悪いけど……」 「わ、わかった!」 「席は……分かるよな」 「大丈夫だよ。それより早く購買行かないと無くなっちゃうんじゃない?」 「うわっ!じゃ、行ってくる!」 「いってらっしゃい」 焦ったように走り出した巣山くんをしばらく見てから、私は1組へ入った。 休み時間の教室の出入りは激しいから、誰が入ったか何て分からないもんね。よかった。 「あ、名前。教科書返しにきたの?」 「勇人。うん、机の上置いといてって言われたから」 「そか。ちょっと話さない?巣山の席座っていいからさ」 「え、い、いいの?」 「大丈夫だいじょうぶ」 じゃ、ちょっと借りまーす……って小さい声で言ってから私は巣山くんの席に座って、勇人の方を向いた。 そんなわざわざ言わなくてもって笑われたけど。 「顔、緩んでる」 「……否定はできない、かな」 「幸せなんだね」 勇人が微笑んだのに私もつられて微笑んだ。 微笑んだと思ったら勇人はすぐに表情を変えた。百面相だよね、勇人って。 「でも、部活ばっかで全然一緒にいられないでしょ?」 「うー……まぁね」 告白する時間を見つけるのも大変でした。 それは言わないけど。 「ね、野球部のマネジやんない?」 「え?マネジ?」 「そうだ。そうすれば部活のときでめ巣山見れるし、篠岡の負担も減る……」 え、何。思いつきだったの? それにどっちかって言うと、篠岡?さんのなんたらって言う方が重要みたいだけど。 「ま、考えてみてよ!悪くない話だと思うし」 「んー……考えてみるけど、マネジって何するの?」 「あ、わかんないか。じゃ練習見においでよ」 「……良いの?」 もちろん、と言ってくれた勇人はまた笑顔になった。 前から練習見に行きたいとは思ってたんだ!野球してる巣山くん見たいし! 「じゃ、行くね!でも……」 「でも?」 「それ、巣山くんに言われたかった……!」 理由はぜんぶ"好きだから" (ただいまーって、苗字どうした?) (な、何でもないっ!!) 2009.01.12 title by 確かに恋だった |