教科書を、忘れてしまいました。



それで、巣山くんに借りたいんだけど借りていいものなのかちょっと不安です。
その前に、1組に行くことだけでドキドキです!
だって1組に私友達いないし……(あ、勇人は別として)


「いーから早く借りてきなさい」


バシッと、友達ちゃんに背中を叩かれました。かなり痛いよ、友達ちゃん……。

仕方なく(巣山くんに借りることがじゃなくて!)私は1組まで来ました。

他のクラスってだけなのに何でこんなに緊張しちゃうんだろう?
教室の作りは同じだし、掲示物も同じプリント。何が違うんだろう…?

そんなことを考えてる私は、まだ1組に入ってすらいません。
しかも運悪く巣山くんいなさそうだし……。


「あれ?名前?」


「あ、勇人」


入口のところでうろうろしてると、机にとっ伏してたらしい勇人が声をかけてきた。
前から2番目の、廊下側。先生の視界に入りやすいとこ、かわいそう。

「どうしたの?」

「わ、すれものして……その……」


もごもごとしだす私。察してください、お願いします。
分かったのか、勇人は笑った。



「巣山ね、さっきからずっと名前見てたよ」



勇人がそう言うと、1番前で寝てた人の身体が動いた。
え、え、まさか…。




「巣山……くん?」





ゆっくりと失礼ながらにも覗き込むと、耳まで赤くさせた巣山くんの顔が見えた。
1番前の席だったんですか、巣山くん。


「……忘れたの何だよ」


「え、オーラル……」


巣山くんが目の前にいることにびっくりして、返事が何か微妙になってしまった。
何も言わずに巣山くんは私に教科書を渡した。
これは、どういう意味でしょうか?
借りても良いってこと?


「え、え?」


「借りに、来たんだろ?」




持ってけよ。



チャイムがタイミング良く鳴って、はっきりとは聞こえなかった。
でも、多分そう言ったんだと思う。
ありがとう、と言って私は慌てて教室へ戻った。

そっか、廊下側の1番前なら教室に入らなくても話せる…かな?





(栄口余計なこと言うなよ)
(気付かれなかったら拗ねるくせに)
(…拗ねねーよ)




2008.10.26


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