ほんの数日前、私は告白に成功した。
私が告白したのは隣のクラスの巣山尚治くん。野球部の巣山尚治くん。

出会いはともかく、私の一目惚れってヤツで…好きだと分かってから1ヶ月して、勇気を振り絞って告白した(野球部は練習ばかりで彼を捕まえることから難しかった)

すると彼は一瞬で顔を真っ赤にして、小さく頷いてくれた。
私は信じられなくて、ホントに?って聞き返した。また彼は頷いてくれて、嬉しくて泣いてしまった。彼は凄く困っていたと思う。






「で?」


そんな馴れ初め(?)を友達の友達ちゃんに話したら、友達ちゃんは不機嫌そうにそう聞き返した。


「……付き合うって…どういうことするの?」

目線を机の上の弁当に向けて、顔が赤いのを隠した。
私はこうやって誰かと付き合うのは巣山くんが初めてだから、何をしていいか分からなかった。


「どういうことって言われてもねー…そういうのって人それぞれだから、私がとやかく言うことでも無いでしょ」「でもー…」

「あ、少女漫画みたいなベタな展開は望まないことね。これだけは言えるわ」



友達ちゃん、冷たい……。
私はいったいどうすればいいの?



「……とりあえず、あそこに行けば良いんじゃない?」


そう言って友達ちゃんは後ろのドアへと目を向けた。
それにつられて私も見てみると、そこには巣山くんがいた。


「彼、違うの?」
「そ…そう!ちょっと行ってくる!」


顔が赤くなるのを感じながら、教室を見回している巣山くんのトコへ急いで向かう。


「す、巣山くん!」
「苗字」
「ど…どうしたの?」


そう聞くと、巣山くんは照れ臭そうに頭をかく。


「化学の教科書、忘れたから借りようと」


思ったんだ。

小さな声で、付け足すように言った。
私は分かった、と言って教科書を取りに友達ちゃんのトコへ戻った。



「噂のカレ?」
「うん」
「カッコイイんじゃない?」
「カッコイイよ!」



少し大きい声でそう言って、化学の教科書を持って巣山くんのトコへ行く。
何かいっぱい往復してる気がするけど、そんなの気にならなかった。



「は、はい!」

「サンキュ」



教科書を渡すと、巣山くんは何か言いたさそうにしていた。

「どうしたの?」
「……お前さ」


巣山くんは屈んで私の耳元に顔を近づけた。
そして小声で言った。




「あんましカッコイイとかでかい声で言うなよ」





「…なんで?」

あまり間を空けずに私がそう聞くと、巣山くんは教科書を持っていない手で顔を覆った。耳、赤いよ?


「…照れんだろ」



じゃあな、と巣山くんは自分の教室へと帰っていった。
残された私は顔を赤くして、友達ちゃんのトコへ戻った。




「幸せそうね」

「…みたい」









返ってきた教科書には、小さくサンキュの文字。

(絶対これ消さない!)




2008.08.28
title by 確かに恋だった



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