今、俺の前で楽しそうに話している彼女は目立つ存在だった。 その理由として、彼女は制服が好きだとか。 色んな制服が着たいがために、西浦に入学したという。 「勇ちゃん、聞いてる?」 「聞いてるよ」 更に本人はオタクらしい(腐女子とか…) 最近流行っている萌え〜とかそう言う奴らしいが。 「その時の三橋とかさ、もう可愛くて仕方ないんだよねえ」 本人の言葉を使って言うと、三橋萌え。 毎日毎日俺にそれについて語っている。 ちょっと前までは田島萌えだった。 「あ、次移動だよね」 疎らになってきた教室を見て、1回話を途切れさせた。 このままじゃ延々と話していそうだ。 「音楽室だねー、9組の前通っていこう」 ここで遠回りだからいやだ、というと彼女は沈んだ表情をする(前にやってしまった) 分かった、と言って教科書を持って教室を出た。 言っておくけど、俺たちは付き合っていない。 入学式に初めて会った仲だ。 …この文章だと俺が誰かよく分からないよね。 俺は栄口勇人。 1-1組、野球部ポジションセカンドの人ですよ。 「おー栄口、次移動?」 「うん、選択なんだ」 「音楽だっけ?」 9組の前を通ると泉が声をかけてきた。 ちょっと雑談を交わしているとき、彼女は教室の中を覗いた。 「ゆ、勇ちゃん行こう!」 「あ、うん。じゃね」 時間ぎりぎりだけど、彼女が急ぐ理由はそれじゃない。 「ヤバイ!メロンパンかぶりついてる!シ●ナみたいだった!萌える!」 理性がもたないから急いでるのだった。 「あーもう、三橋と話したい!」 「紹介したげよっか?あ、余計なお世話かもしんないけど」 「お願いします!」 結局、オタクってよく分からない。 「三橋、世界史の教科書貸して欲しいんだけど…」 「い、いいよっ」 昼休み、9組に来た。 案の定三橋は教室に居た。 「…あのさ、いつも思ってたんだけど」 泉が彼女に目を向けて言った。 「誰?」 彼女はセーラー服(夏服)を着ていて、涼しげである。 「苗字名前」 |