夜中に携帯のバイブが鳴った。 練習で疲れてんのに一体誰だよ。 どうでもいいヤツだったら、拒否しちまえばいいか。 起きたばかりの頭をそれなりに動かして、俺は携帯を手に取った。 "苗字" ……コイツかよ。 拒否したら明日が怖いな…。 何でとらなかったの!、と耳元で怒鳴られるに違いない。 仕方なく通話ボタンを押した。 『おはよー。良い睡眠はとれた?』 「……お前が妨害してんだけど…」 『まぁまぁ。ところで質問なんだけどさ』 「明日でもいいじゃねぇかよ」 『今じゃなきゃダメなんだって』 迷惑なヤツだ。 そして自分勝手だ。 『今、自分勝手だって思ったでしょ』 「…だったらなんだよ」 なんで分かるんだよ。 『榛名の方が自分勝手だよ』 「はあ!?」 『夜中なんだからボリューム落として』 「……んで?」 さっさと話しを終わらせて寝ちまおう。 俺は眠いんだ。 『今、何月何日何曜日?』 「じゃあな」 『ああっ!切るなぁ!』 「声でけぇ」 んなくだらないことを聞くために電話してきたのかよ。 ふざけんな。 『いいから答えてよ!』 渋々カレンダーに目をやる。 「5月23日金曜日」 『はーい、ハズレ!』 本気で電話を切りたくなった。 くそ、眠気覚めちまったじゃねえかよ。 『今日は5月24日だよ。12時過ぎたもん』 「なんでんなこと聞い……あ」 そっか。 5月24日は…。 『誕生日おめでとう』 俺の誕生日だ。 『じゃあ切るね。おやすみ』 「待てよ」 「長電話、付き合え」 『えー…ヤダよ。眠いし』 「お前、それが人を起こしたヤツの言う台詞か」 きっと、誰よりも先に祝ってくれたのが嬉しかったんだと思う。 時間不明の電話 『…仕方ないなぁ』 2008/05/24 |