と、水谷文貴がはっきりとその気持ちを自覚する前にフラれてから1週間。

「千代ー!」
「あ、今日は制服じゃないの?」
「なんかね、すっごい悩むの」
「?」

「勇ちゃんって何なんだろうって」

「栄口くん…?」
「うん。なんとなくそういう目で見てたんだけど、なんか…」
「俺がなんだって?」
「わ!勇ちゃん!」
「次移動だよ、時間大丈夫?」
「待って!あたしも行く!」
「…名前ちゃん……?」




…本人は気づいてないんだろうな。





「んで、さっきの続きね」
昼休みの7組。名前は再びやってきた。
「続きも何も、言い切ってたよ?」
「あ、そうだった」
「あのあと、私も考えたんだけど…」
「うんうん」

「名前ちゃん、栄口くんのこと好きなんじゃない?」
「…それは無いでしょ」
「だって、固定できないんでしょ?それにさっき呼ばれて顔、赤くなってたし」
「う……」
「いっそのこと栄口くんと付き合っちゃいなよ」
「で、でも…」

「遅れてごめんー」

「!!」
「あ、今日昼休み話すって言ってたっけ」
「あれ?苗字も来てたの?」
「栄口ー、こっちー」
「うん。なんか顔赤くない?大丈夫?」
「…っ……」


「絶対固定してやるんだからー!」


「へ?」
「名前ちゃん…」
「え、固定ってなに?なんのこと?」

顔を真赤にして教室を出て行く彼女がいる。

何のことか分からない彼がいる。

「自分で条件決めておいて気づかないのはどうかと思うけどな」
「篠岡?なんの話?」
「しばらくしたら分かるんじゃないかな」

あえて口出ししない友達想いの彼女もいる。


「(今日は制服着てないから何か変なんだ!)」










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