「と、いうことで誘って?」
「はあ?」
昼休み、予告どおり水谷が来た。
クリームパンといちご牛乳他を持って。

「にっぶいなぁ、あたしが誘ったら違和感バリバリに決まってんじゃん」
「俺を利用してるの!?」
「その通り」
悪意の無い笑顔を見せて、名前は即答した。
その笑顔に水谷はがくっとうなだれる。
「まあ、あたしとしては三橋がいればそれでいいんだけど、多分無理だろうから3人まとめてよろ」
「俺に否定権はないのね…」
「早く行かないと時間なくなるよ」
「はいはい…」
嬉しそうに弁当を持って教室を出る名前の後ろを、水谷はうなだれたままついて行った。



「三橋ィ〜…」
「み、ずたにくん」
「水谷どした!」
「一緒に昼飯食べない?あぶれちゃって」
9組に行くと、既に弁当の半分を食べ終わっている3人が迎えてくれた。
「お前あぶれたのか、友達いねえんだ」
「泉ひでぇ…んでいい?」
「い、いいよ!」
「そんで・・・コイツもいい?」
水谷が少しひきつった笑顔で入口の方を見ると、名前が教室に入ってきた。

「あ、苗字!」
「あたしもあぶれたんだぁ」
少し顔を赤らめて名前はさりげなく三橋の隣を陣取った。
「(あれ!?苗字なんかキャラ違わない!?あのはっちゃけはどこへ!?)」
自分の時は失礼なコトばっかり言って筋の通ってない会話をさせられたのに、ちゃんと理由を言って参加させてもらおうとしている名前に水谷は驚く。
予想として、理由も言わず参加しようとするという理不尽な考えがあったからだ。

「うん!」
「勇ちゃんミーティングだって」
「あー…じゃあ今日の練習はいつもと違うかもな」
「マジで!すっげ楽しみ!」
いつもと違う練習が待ち遠しいのか、田島は弁当を一気に口の中にかき込む。
そんな急いだってすぐに練習は出来ないのに。
「てか、勇ちゃんって栄口?」
泉が牛乳のストローをくわえながら苗字に聞いた。
「そうだよ」
「幼馴染みか何か?」
「全然、入学式のときに初めて会った」
「じゃ付き合ってんの?」
「うんにゃ」
一問一答を終え、三橋と田島が同時にパンにかぶりついたのを名前は見逃さなかった。
「じゃあ水谷は?」
「今日会ったばっか」

答えながらも観察は欠かさない名前に、水谷はさりげなくため息をついた。
「んー…」
「苗字?」
「孝介はツンデレだ」
「はあ!?」
いきなり箸を動かす手を止めたと思ったら、そんなことを言い出した名前に泉は教室中に聞こえるくらいの大声で批判した。
「あ、苗字はこういうコなんだよね…俺も言われた」
「そういえば聞くの忘れてたけど、名前で呼ぶから勝手に」
相変わらずの(今日会ったばかりに近いけど)マイペースに、水谷と泉がため息をついた。
あまり気にしてないらしい、三橋と田島は普通に話す。
「俺は全然いーけどお?」
「ゆーいちろは天然だね(しばらく前にそう決めた)」
「天然?」
「お、おれもいいよっ!名前!」
「廉は癒し系!ゆーいちろと2人でいれば完璧!」
名前の暴走が始まって、水谷は一緒に食べようとしていたことを後悔した。

「天然と癒し系は判るとしてツンデレってなんだ!」
「ヘタレ攻めも!」
「ああ、ちょっとした専門用語でね。知らないほうがいいかも「「じゃあ言うな!」」
「あー…もう時間になっちまった」
「じゃ帰るねえ、おじゃましましたあ」
「なんか疲れた」
「楽しかったぁ」
「お、おれも楽しかった!」
「またおじゃましていい?」
「うんっ!」
「…苗字?」

ガシッ

「へ?」
教室から出ると名前は水谷の腕にしがみついた。
「もう幸せ…死んでもいい…っ…」
「萌えてるのか!」



「えっとー…どうしたの?」
「動きそうにないからつれてきた」
「あ、ありがと」








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