こうして私は私の世界を創る。

音による境をつくり、コトバの住民をつくる。
曲調によって世界の設定をつくり、歌声によりそれらは確立される。
ああ、もう少しだ。もう少しでまた新しい世界が出来上がる。



「音漏れ」




ガラガラ

せっかく創り上げた世界があっけなく崩れていった。
またしてもコイツの仕業だ。いったいコイツは何度私の世界を壊せば気が済むのだろうか。
私の左耳からイヤホンを外したソイツを私はじろりと見上げる。
何だよ、と答えたソイツは私の右耳からもイヤホンを奪っていった。


「うわ、音デカイ」

私から奪ったイヤホンを自身の耳にあてると、顔を歪めた。
すぐにイヤホンを外し、私の方に手を伸ばす。

「ちょ、何すんの変態」
「プレーヤーどこだよ」

どうやらプレーヤーを捜しているらしい。
イヤホンの先は私のスカートのポケットに繋がっていて、コイツ…榛名はポケットの中に手を突っ込んでゴソゴソとプレーヤーを捜し出した。
くすぐったいからやめてよ。
うるせぇ。
なんて言いながら、プレーヤーはようやく捜しあてられたようだ。ポケットの中から姿を見せた。
プレーヤーとにらめっこ、曲目を見ていっている。



「あ、俺これ好き。これにしよう」


私の隣に座って私の左耳にイヤホンをあてる。
そのイヤホンを受け取って私は左耳につけた。
榛名も自分の右耳にイヤホンをつけた。するとすぐに彼が選曲した音楽が流れだした。
いつもの音量より2つばかり小さかった。

ノリの良いポップス。思わず体が動く。
歌詞は片想いの心情を語っている。
ああ、これから創られる世界はたくさんの可能性があるな。
色々なカタチに、色に変わっていく。楽しそうな世界。
住民は皆、恋をするの。毎日ドキドキして、毎日フワフワしてる。


「……片耳聴こえないの、変」
「うるせー」



彼は破壊者から創造主になった。
壊すのも創るのも、私の世界に干渉できるのは榛名だけだった。
私と彼の創る世界は、どんな世界になるだろう。




私と君が神様になった日


(あーあ、曲終わっちゃった)
(次これ聴こうぜ)
(……失恋ソングはやめようよ)



2009.07.16





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