朝練に向かうときだった。
公園で小さくうずくまる苗字を見たのは。

こんな朝早くから何してるんだろうって思って後ろから覗き込んでみた。俺に、気付くかな。

苗字は泣いていた。
小さく泣き声を漏らして、何度も何度も目をこすっていた。
それでも溢れてくる涙にどうしようもなくなっていた。


「…苗字?」


俺の声に肩を揺らして、ゆっくりと振り向いた。
やっぱり、目が赤くなっていた。
俺がいることに驚いて、更に顔も赤くなった。


「え、たじっ……」
「もう、泣き済んだのか?」


そう言った俺にまた、苗字は目を見開いた。

俺は何で泣いていたのか聞くつもりは無いし、泣くなと言うつもりも無かった。
そりゃ泣きたいときだってあるし、泣いてた理由なんて聞かれたくないものだと思う。



「……え…?」




「無理して、泣き止まなくてもいいよ」






ぶわっ……






そんな音が聞こえてくるように苗字はまた泣き出した。
俺は苗字の隣にしゃがみ込んで、頭を撫で続けた。



「無理して、笑う必要もねぇから。思う存分泣いたらいいよ」

大きく頷いた。
多分、今の苗字は無理して笑った顔より、泣いてる顔の方が綺麗。
それは自分を押し殺してないから。



「…もう、いいの?」
「うん。ありがと、田島」


少し、すっきりしたような顔をしていた。
目を赤く腫らした苗字は立ち上がった。



「じゃ、学校行くか!」
「え、今何時?」
「まだ7時だぜ」
「うっそ!私そんなに泣いてたの!?」


いったい、いつから泣き続けていたんだろう。
でも、もう大丈夫そうだ。



雨のち晴れ



(朝練!!)
(え、ご、ごめん!)



2008.11.12




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