さっさと帰って寝て、たまに勉強して、飯喰って、テレビ見てまた寝る。

これがいつも通りで、俺はこの生活が好きだった。
ただ淡々と送る生活の中にもちゃんとやり甲斐があったりするし、何より平和だからだ。



「おい浜田…」


そんな生活は、この男によっていとも簡単に壊された。



「俺は深見先輩がいるって聞いたから来たんだけど」
「やー…お前サボるから困ってたっけ、そう言ったら必ず来るって梶が」

悪気も何もなさそうに笑う浜田を睨んだあと、俺を騙した根源と言われる梶さんを睨んだ。
梶さんはしれっとして、俺にこう言った。

「サボるお前が悪い」


まったくその通りなんだが、凄くムカツク。
先輩だってことを忘れてたことにして殴ってもよろしいでしょうか?


「まあ諦めるんだな、苗字」
「梅ちゃんは黙ってて下さい」
「そんなこと言っていいのかなぁ〜?」


今俺は凄く機嫌が悪いんだ。
これ以上悪くさせないでくれ。
そんな何かを悪巧みをしているようにニヤけないでくれ。
とても腹が立つ。

「深見のこと好きなんだろ?」


「なっ…ち、違う!」
「苗字、顔赤い」
「梶さんっ!」
「あー本当だぁ。苗字真っ赤」
「浜田ぁ!」



面白いおもちゃを見つけた子供のように、俺をからかう3人。

「そんな恥ずかしがることじゃねえって」
「あんたらがからかわなければ恥ずかしがらねぇって!」
「あ、認めた」


前言撤回。
子供のように、じゃなくて、子供だ。
そして俺は3人のおもちゃ。
なんで俺、応援団やるって言っちゃったんだろ。


「なぁ、俺達協力してやろうか?」
「さっさと練習終わらせちまおうぜ!」


俺は半分怒鳴るようにそう言って、野球部がいる第2グラウンドが遠くに見えるフェンスへと駆け寄った。

そして大きく息を吸った。


「勝てよー!にしうらーぜ!」




ストレスを発散するかのように、外に向かって叫んだ。




「-----よしっ!俺も!」





浜田は楽しそうにそう言って俺の隣に来ると、大きく息を吸った。


「負けんな、にしっ!ゲホッゴホ…」


「むせてんじゃねえよ」
「応援団長失格だな」








カキ ------ン…









俺達の応援に返事をするかのように、球を打った金属音が響いた。



















「あ、吹部の演奏始まった」
「にしう「浜田黙れ!」…」







2008/05/23




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