「……お前、何言ってんの?」 友達、だった。 友達として好きだったんだ。 いつの間にかその好きは違うものに変わっていて、ようやくその正体分かった。 でも分からないままで良かったと思う。 それを受け入れて、開き直るまでに凄い時間を費やしたと思う。 受け入れられたことが、自分でも凄いと思う。それくらいのことなのだ。 だからそれを俺から言われた阿部は、驚いた顔で信じられないと言っている。 お前は勘違いをしているだけじゃないのか、って。 「馬鹿言ってんじゃねえよ」 「本気だよ、俺は」 「……何で」 何で、と言われるとは思わなかった。 明確な理由は無いことを改めて実感させられて辛くなった。 ほぼ直感的に、そう答えると馬鹿か、と返ってきた。 ああ、やっぱり言わなければ良かった。 前の友達としての関係すら崩れていった感じがした。 もうこの話はいいや。 別に付き合いたいとか、そんなんじゃなかったし。 明日からどうしようか、できれば変わらずに接してほしい、それだけ伝えて帰ろうと顔を上げた。 そこに見えたのは何とも言い難い表情をした阿部だった。 「……阿部?」 赤いのか青いのかよく分からない顔色の阿部は思い切り俺を殴った。 突然のことに俺はわけが分からなかった。 じんじんする頬に手を当てて阿部を見ると、阿部は泣いているように見えた。 それを聞こうとは思わないけど、何があったのか気になった。 何も言わずに阿部は俺の肩に額を乗せる。 やっぱり俺のせいか、と理解してこの状況をどうすればいいか考える。 何が最良な選択か分からなくて考えていると、背中に手が回ったのを感じた。 それを俺はためらいながらも自分にとって都合の良いように捕らえて、阿部の背中に手を回した。 帰り方を忘れた子ども (もう後戻りはできない) 2009.04.21 title by にやり |