「一歩ひいて見ると、あいつら面白いな」


いつもの笑顔を絶やさずにコイツはそう言った。
俺とコイツは今、田島たちと離れて窓側の後ろ隅を占領している。
そこで俺たちは田島たちを観察。
いつもは一緒に馬鹿やってるから気づかなかったことに気づける。

例えば、あいつらの周りの空気だけ凄い和んでいるとか。
誰かが必ずその会話を聞いてて笑っていたり、可愛いなんて言っているとか。
可愛い…か。


「何かあいつらさ、子犬みてえだな」
「……いつも一緒にいるお前も子犬みてえってことだぞ?」
「ええ!」

その理屈で言えば俺もってことなんだけど。
犬は、ちょっと勘弁だな。って苦笑しながら言うコイツは視線を俺に移した。
コイツ犬嫌いだもんな。

「でも、泉は犬っていうより猫だよな」
「はあ?」

だよな、ってもう一回言ってにっこり。
何考えてんだコイツ……嫌な予感しかしない。



「そ、そろそろ戻ろうぜ」
「まだ時間あんだろ」

一瞬だけマジの目になって、俺の腕をがっしりと掴む。絶対今の俺、微妙に引き攣った顔してる。
腕を掴んだまま、ゆっくりと耳元でコイツは囁いた。




「にゃん、て言って?」
「断る」
「あ、やっぱりちょっと待って。ムービー撮るから」
「断ると言っただろ」

本当にムービーに撮る気らしく、携帯を取り出して操作していく。
逃がしてくれる気はさらさら無いらしく、俺を窓と自分の間に挟んでいる。
誰か俺たちに気づいてくれ。
あれ?もしかして田島たちと一緒にいなかったら俺達って目立たない?

教室の隅で君と×××

(皆気づいてないフリしてるだけだよ)
(え?)






2009.03.05
title by にやり



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