「ふー、疲れた」

「お疲れー」




顔を赤らめているコイツは、大掃除の締め、風呂掃除をしてきたところだ。
俺は一応客。親に話しをつけてコイツの家で年を越すことにした。


「これで安心して年を越せるな」
「そういうもんか?」
「そういうもん。今蕎麦作るな」


そう言って鍋に水をはって、コンロにかけた。テレビは見慣れた歌手が歌っていた。
棚から蕎麦を出して、袋から2人前取り出してコンロの横に置いたりと、手際良く作業をこなしていく。

葱を刻む音、聴き飽きた歌。
2つの音を耳に、こたつの中で今年が終わっていくのを感じた。



「はい、おまち」
「おー、美味そ」


あったかそうな蕎麦がこたつの上に置かれた。
それに七味唐辛子をかけて、いただきますと行儀よく挨拶をした。


「今年は色々あったなー……」
「あー…確かに」
「色々ありすぎて思い出語るにも語れねぇな」
「それもそうだ」


泉との思い出ばっかだけど。
そう付け足したコイツの顔は至っていつも通りで。赤面したのは俺だけ。
あ、この歌手知ってるって話題はテレビに変わる。



今年は本当に色々あったと思う。
西浦にきて、1年だけの野球部で野球やって、かなりキツイ練習こなして、そんでコイツに出会って……。



「……色々、ありがとうな」
「へ?」
「今年一年……」
「……泉も、ありがとな」




気付いたらテレビではカウントダウンが始まっていた。
眠くなってきた目をこすり、頭の中で一緒に数える。


5、4、3、2、1……











「、あけおめキス」


テレビの向こうではあけましておめでとうなんて挨拶をしながら盛り上がっている。
0、と頭で数えたと同時に唇に何かが触れていた。
キスされたのだと認識すると、また一つキスが降ってきた。
優しくて甘い、そんなキス。






「今年も大好きだよ、泉」今年も、抱えきれないほどの愛をあげるよ。






2008.12.30


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