頭は、ハッキリ言ってしまえば悪い。
運動神経は切れてそう。神経ホントに繋がってんのか?

あ、でも性格は良い。人に好かれやすいっていうの?
実際俺も結構好きだし……ていうか、好きなのは当たり前っていうか……その、うん。


「ゆーとー、今日ウチ来る?」

まぁ、つまりそういうこと。
俺たちはそういう関係。

「うん」

俺だけが知ってる、名前の得意技。
それは、料理。
練習が終わって、名前の家に行って美味しい料理を振る舞ってもらう。それは俺にとって至福の時なんだ。



「もーちょい待っててねー」

いつもの間延びした声が、俺を待たせる。
分かったよ、って言って俺は椅子に腰掛ける。そして出されたココアを飲んで、一息ついた。

料理をする音だけが耳に届いて、眠たくなってきた。
トントンと包丁の音。
ザーと水道の音。
たまに聞こえる名前の独り言。
全部、全部俺を安心させる。




ぐー…



「あ……」

それらの音に新しく入った音。俺の腹の音だった。
かなり腹が減っていたことを、恥ずかしいくらいハッキリと主張していた。

「…ゆーとの腹は正直だね」
「聞こえたよね…」
「ん。可愛い」

料理する手を休めて、こっちに来て頭を撫でた。
もう一回、可愛いって言っておでこにキスをした。
俺は顔を赤くさせながらも顔を上げて、もう一回の合図を送る。
そうすれば、名前は優しいキスをくれるんだ。
料理

キス
だけは上手い男



2008.12.18
title by にやり



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