「P4主人公、」


今、何考えてる?
ただボーッと立っているP4主人公はテレビを見つめていた。
テレビというのは、テレビの中からジュネスに戻るためにクマが出してくれたテレビ。
今日はもう終わりにしよう、と帰るところだったのだ。
皆もう向こうに行っていて、残るはP4主人公と私だけだった。

インフルエンザが治って、私は久しぶりにテレビの中に入った。
そして美しすぎる菜々子ちゃんの世界を見た。
それは本当に美しくて、でも淋しすぎて涙が出た。
まだ菜々子ちゃんを救出できていない、天気予報もあと数日で雨が続くことを知らせている。
P4主人公は焦っているのだ。
このまま戻らず、一人ででも菜々子ちゃんの元へ向かいたいのだろう。


「……先、いいよ」
「P4主人公が先に入って」
「俺は後でいいから」
「駄目」

ぐいぐい、P4主人公の背中を押す。
皆が帰ってから時間が経っている、向こうも不思議に思ってるはずだ。
無理矢理にでも帰らせなきゃ。


「明日は休みだよ?明日、朝からやろうよ。皆駄目でも私は大丈夫だから」
「……分かった」


納得してくれたらしい、P4主人公は右手を伸ばしてテレビへと近づいた。
しかしそこで動きは止まった。
ゆっくりと私を見て、

今、1番信用できるのは苗字だから。

と、そう言ってP4主人公はテレビをくぐった。
一人残された私は膝をついた。
そんなにP4主人公に信頼されているなんて。
私が裏切ってるとは知らずに、そんな、





「……っ…ううっ…」



こんな思いするなら、いっそ狂いきってしまいたかった。



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