揃いも揃って美少女たちが温泉で気持ちよさそうに泳いでいる。
そんな光景を見ている私の立場をうらやましいと思う人は山ほどいるだろう。私も正直嬉しい。

ここは天城屋旅館の露天風呂。
楽しそうだった彼女たちは泳ぎ終わって次はりせちゃんがモノマネやるとか言いだした。
ああそろそろヤバイな。
確かもうちょっとしたら彼らがやってくる。いや、あれは私たちが悪いんだけどさ…。


「のぼせてきたから先あがるね」
「大丈夫?」
「へーきへーき。んじゃ」






ガラッとドアを開ける。
それから後悔した。しまった時間を考えてなかった。


「え……苗字…?」



そこには、さあこれから風呂に入ろうか!という姿の花村たち。
そうだよね、脱ぐ時間とか考えたらこの時間だよね。えっとー…自分、今どんな格好してたっけ?
ピシャ、とドアを閉める。
この光景を女の子たちに見たら、きっと風呂桶を投げつけられるだろう。それは可哀相だ。
あ、いやだからって見られて良いってわけでもないんだけども。
ヤバイ混乱してきた、えーとえーと…。




「ぶっ!!」


とりあえず手に持っていたシャンプーやら洗顔フォームやらを投げつけることにしました。
そのままトイレに駆け込んで、早く服着て出て行けと怒鳴った。

――今頃一人酒している足立さん
気をつけることはできませんでした。
そして、女の子らしい反応もできませんでした。





「苗字、俺たち出てくから」
「わかった」


トイレから出ると、そこには誰もいなかった。
ああ寒い。すっかり湯冷めしちまったよ。
風邪ひいたらどうしてくれよう…。
まあそんなのはそんときにならないとね。とりあえず服を着て、脱衣所をあとにした。



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