「うわ、何アレ」



今日は楽しみなのかそうじゃないのかよく分からないけど、文化祭。
ミス?八高コンテストを、遠くの方から足立さんと2人で見ていた。
ステージには女装した完二が立っていて、それを見た足立さんの感想が「何アレ」だ。
確かにアレは……ねえ?
何度見てもモンローには見えない。

「最近の子はああいうのが好きなの?」
「何馬鹿なこと言ってるんですか」
「あれはいただけないなぁ…」
「見た目綺麗だったらいただけるような言い方ですね」
「いただかないから」


クラスの出し物は、花村が出した合コン喫茶だったが客が全く来なかった。
それを知っていた私は当番をすっぽかして、足立さんとうろうろしていたのだ。
足立さんはこういうの苦手なのによく来てくれたと思う。
前の時は来てくれなかったし。

「ありがとうございます」
「え?」
「文化祭、来てくれて。ホントは嫌いですよね、こういうの」
「あー…まあね」

ステージには見事なスケバンスタイルのP4主人公が立っていた。
ホントは推薦されて仕方なくなのに、自分から参加したとか言ってやがる。
悔しいから写真撮ってやろう。そして堂島さんに見せてやる。

「ガキどもが特に意味も無く馬鹿騒ぎしてるの、凄くムカつく。死ねよ」
「もう少しオブラートに包みましょうよ」
「でも、そんなことやれるのも今のうちなんだよね」


ステージを見つめる足立さんは、テレビで会った時と同じことを言っているのに、表情はまるで違った。
――― これが私が足立さんを落としたことで変わったことなのか。
無意識にジッと見ていたらしく、どうかした?と聞かれた。
ハッと我に帰り、何でもないと首を横に振ってもう一度足立さんの顔を見た。



「…足立さんって、私と一回り年違うんですよね」
「……だから?」
「そんなこと忘れちゃいます」

私よりたくさんの経験をしている足立さんが出した結論があれだった。
それは凄く悲しくて、悲しくて仕方なかった。
ああそうか。やっと分かった。
どうして私が、P4主人公がやり直しているのか。
悲しいからだ。
自分の納得のいく結論を出すためにやり直しているんだ。



「それ、褒め言葉?」
「ご想像にお任せします」
「犯罪だと言いたいの?」
「ご想像にお任せします」




さて、
クマがステージ上で無駄に愛想を振り撒いているのを見てそろそろ逃げておこうかと思う。
何せミス八高コンテストに私まで登録されているんだ。浮くに決まってるじゃねーかこのやろう。


「足立さん、行きましょう」
「どこに?」
「逃げるんですよ、愛の逃避行です」
「………何で?」
「良いから行きましょう!」


説明は後でしますから。
そう言って足立さんの手を握って出口へと引っ張った。
戸惑っていた足立さんも諦めたのか手を握り返して足を進めてくれた。
水着審査なんてゴメンだからね!!





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