辿り着いたそこに、足立さんはいた。

相変わらずの寝癖と曲がったネクタイに猫背で突っ立っていた足立さんは、ゆっくりこっちを見た。
全てに絶望したような目で、私たちを見回して小さくため息をついた。



「……足立さん」
「何かいっぱい来たなあ…」

人を馬鹿にしたような目でそうつぶやいたと思ったら、更に馬鹿にするような言葉を続けた。

「本当、世の中クソだよな。
こんなガキが人を救えるんだからさ」


あの時は足立さんが犯人だって分かったときだったから、話を聞いていられた。
どうやってテレビの中に入れたのか、とか動機とかだったからだ。
でも今は聞いてられない。
苛立ちがどんどん何かよく分からない違うものに変わっていく。
皆はただ苛々しているだけで、やがて完二が足立さんに殴りかかろうとした。


「なっ……!?」

しかし足立さんは消えてしまった。
さっきまでここにいた足立さんは偽物だった。蜃気楼みたいなものだろうか。


「僕のところまでおいでよ」

声までも消えてしまった。その代わりに出現したのは足立さんの元へと続く穴だった。


「これは…」
「来いってことかよ」
「センセイ…」
「行こう」




恐る恐る、その穴を通っていった。
落とされてもやることは変わらないんだね、やっぱり足立さんは足立さんだよ。
何でかは分からないけど、少し嬉しかった。
テレビの中のこの世界は、その人を映すモノ。
あれが違ったら足立さんも違うってことだもんね。



「助けてあげるよ、足立さん」



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