自ら倒してよ、なんて頼むラスボスがゲームに登場しただろうか。 俺はあまりゲームをしないが、そんなヤツ見たことない。 苗字はどこか辛そうな目をして俺を見てくる。 腹を括って、メンバーを決めようと皆を見た。 ……駄目だ。皆、驚きすぎて体が動いていない。 それに、苗字と戦うなんて…。 「P4主人公くん、何で名前…浮いてるの…?」 天城が聞いてきた。 皆には見えていないんだろうか。あの、宙に存在する床が。 様子を見る限り、皆には見えていないらしい。 「床だ」 「ゆか?」 「俺には、床が見える」 「じゃあ、一人目はP4主人公で決まり」 苗字が言った。 あの床が見えるヤツじゃなきゃ駄目だというのか。…そりゃそうか。 けれどそれじゃあ俺しかいないんじゃ…。 「もう一人は、透さん」 名前を呼ばれて、足立さんは分かっていたかのように「はいはい」と返事をして拳銃を握って弾の確認をし出した。 「ちょ、ちょっと待ってください!」 「何。君も最終確認くらいしたら?」 「戦うつもりですか!?」 何言ってるの? そう言われた。 足立さんの目はどこか冷えていて、本気だと言うようだった。 「戦わないと終わらないんだよ?友達だからって逃げていいわけないんだ」 「それは俺の場合です!足立さんは…」 「私情を挟んでられる状況じゃないでしょ」 そう言って足立さんは柵を乗り越える。 やらなければならないのか。 俺はもう一度皆を見る。 「あの床が見える人、いない?」 皆は首を横に振った。 一生懸命目を細めて見てくれるが、虚しくも見えないらしい。 「じゃあ、俺と足立さんで」 「P4主人公くん…」 「……行ってくる」 足立さんの後を追って柵を越え、皆には見えない床に踏み出す。 そして見渡してみた。 随分と広さがある。 「遅い」 「すみません」 「僕は君も殺せるからね。私情挟んで邪魔したりしないでよ」 「貴方は誰も殺してないですよ。"テレビに落としただけ"」 「……さ、行こうか」 2009.12.19 |