「……一旦、引き返そう」 体育館にいたシャドウを全て倒して、皆は疲れていた。 あれだけの数だ、仕方ない。 MPも底を尽きそうだ。皆は頷いてくれた。 戻ったら話そう。苗字のこと。俺のこと。 「苗字は何で、足立さんを落としたんだろう」 フードコートで陽介が言う。 あれからずっと疑問に思っていたらしい。 話しやすくなった、と思った。 恐らくだけど、と前置きを置いて俺は話しだした。 恐らくというか確信に近いのだが。 「苗字はそうしなければならなかったんだ」 「え?」 「実はこの事件の犯人は苗字じゃなくて……」 「僕なんだ」 空いている苗字がいつもいる席に誰かが座った。 皆が目を見開いた。だってこの人は自分が犯人だってことを認めたんだ。 あれだけとぼけようとしていたこの人が。 「足立さん…?」 「さっき何て言った…?」 「僕が犯人だよ。僕が山野真由美と小西早紀をテレビに落としたんだ」 何なら全部話そうか、と足立さんは話しだした。 信じられない。本当に。 良いのかわからないが、苗字が足立さんを落としたことでここまで変わるのか。 ア然と、どこを見るでもなく足立さんの話を聞くわけでもなく、ただ目の前の出来事に驚いていると誰かからの視線を感じた。 ハッと焦点を合わせると、視線の正体は足立さんだということが分かった。 「な、んですか」 「明日も行くでしょ?僕も行く」 行くからね。と念を押すようにもう一度言われた。 つまり足立さんは明日、決着をつけたいというのだ。全く勝手なことを。 「目を覚まさせてあげないと」 |