「ああもう、まただ!」
「次は保健室!?2階にいたのに!」


テレビの中に入って苗字の居場所を見つけたはいいが、そこはとんでもなく面倒なところだった。
八十神高校だったところにも驚いたが、それよりも構造だ。
廊下なんてものが存在しやしない。
教室がドアひとつで行き来できるなんて。それだけなら便利だけど、行き先が全くわからないから話は別だ。
出てくるシャドウがそこまで強くないのが唯一の救いだ。


「……体育館だ」


いくつめかのドアを開けるとそこは体育館だった。
見通しの良い体育館のステージを見るとそこには、




「名前っ!!」



里中が叫ぶ。
そこには苗字がいた。よく見ると目が金色なのでシャドウなのだろう。
苗字はあの時とは違う服を着ている。確かあれは、"今回"は逃げたがミスコンの時の格好だ。
本人はひどく恥ずかしがっていたが、天城たちに劣らなかったのを覚えている。



『私ね、嬉しかったの』


ステージ上で彼女が言う。
観客のようにシャドウがステージの下から彼女を見ている。
とにかく今は彼女の言葉に集中することにした。


『あの時、あの人を落としたおかげだったの!
前は来てくれなかったのに。どれだけ面白いから、と言っても来てくれなかったのに。
なのに今回は来てくれたの!
私は何も言わなかったのに、あの人から行くって言ってくれて。有休とってまで来てくれたの!
とても楽しかった。幸せだった。
ああ、落として良かったって思ったの!』


認めた。
足立さんを落としたことを、里中たちがいる前で認めた。
ちら、と隣を見るとア然とする彼女達に胸が痛んだ。

「なあ」
「ん?」
「"前"って何なんだ?」


陽介が視線を苗字から離さないまま、そう聞いた。
答えは分かるがどう説明したものか。そもそも説明して良いものなのか。

「……さあな」
「苗字の言ってること、ちょっと分かんねえんだ」
「…陽介」
「なんで足立さんを落としたのか、さっぱりなんだ。
だって苗字はテレビに落とされたら死ぬかもしれないことを知っているのに。足立さんと付き合ってるのに。
……理由がわかんねえんだよ。」


ああ、これは説明しなきゃならないな。
信じてもらえないとは思うけど、言わなきゃならない。





『幸せだったのに!なのに!
あんたたちが邪魔したの!!
私のことなんてほって置けば良かったのに!』


苗字はステージ上から走っていった。
入れ代わるように闘魂のギガスが出てくる。観客であったシャドウが一斉にこっちを向く。
戦闘開始だ。刀を構えた。


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