目が覚めるとそこは、学校だった。 私たちが毎日通っている八十神高校。ここは…ああ、私たちの教室ではないか。 だけど、どこか違和感を感じた。例えば見るに堪えない悪口が殴り書かれた黒板とか。無残に割られた窓ガラスから覗く赤黒い空とか。 そうしてようやく気づいた。 ここはテレビの中なんだ、と。 頭がいやに冷静で、あの時のことを思い出す。 あの時、ついにP4主人公にバレた私はテレビの中へ…―― ここは前に私がいた場所とは違った。 私がペルソナを得た場所は、もう少し綺麗だった。 綺麗という言い方もどうかと思うが、ここはキタナイのだ。この世界を作りだした私がキタナイと言うように。 だがここは不思議と居心地が良かった。 「…私は、ここで皆に倒されるのか」 戦わずに解決、なんてそんな中途半端なこと。 ここまでやったなら最後まで悪者でいるべきだ。 とりあえず少し歩いてみようか、と教室を出た。するとそこは廊下ではなくまた別の教室。 血の水溜まりが所々に見える。 またドアを開けると、次は職員室に繋がった。 「何これ…めちゃくちゃ」 廊下、というものは無いのだろうか。 面白いことに教室ごとに微妙にだが空気が違って退屈はしない。ここは少し寒い。 何度かドアを開けると、シャドウが現れだした。 いつもの癖で武器を構えたが、シャドウからは殺気というかそういうものが感じられなかった。 武器を下ろして、恐る恐る手を伸ばしてみる。シャドウは逃げないし攻撃もしてこない。 ついに、私の手はシャドウに触れた。 こんなペットを触るようにシャドウに触れるなんて初めてだ。何だか可愛く思えてきた。 つまり、私はここに受け入れられたのだ。 2009.10.16 |