「あれ、堂島さん…?」 菜々子ちゃんの病室から、堂島さんがゆっくりと出てきた。そしてどこかへ向かう。 僕に気づかなかったのだろうか。気づいて欲しかったわけじゃないけど。 堂島さんの後ろ姿から視線を外すと、何人かの子供が泣いていた。 ……まさか、嘘だろう? 一人、名前ちゃんだけが何故か長椅子に横になっていた。 彼女の側へ行くと、りせちーが泣いてぐしゃぐしゃの顔でこっちを見る。 あだちさ、ん とかすれた声で言ってまた泣き出した。 病室から何人か出てきた。彼らもまた泣いていた。 「……ちょっと待てよ、あっち堂島さんの病室じゃないだろ…」 どういうことだ、と巽完二に胸倉を掴まれ、生田目がこの病院に入院してることと生田目の病室を吐いてしまった。 確かに今の堂島さんなら生田目を殺してしまうかもしれない。 病院なのにも関わらず、彼らは走り出した。堂島さんを止めるために。 「足立さん」 一人残っていたりせちーが、僕を呼ぶ。 名前ちゃんが横になっていた長椅子に座っていた彼女は立ち上がって、僕に言う。 「名前先輩を、お願いします」 「……分かった」 そう答えると、一回笑って彼女は皆のあとを追った。 それを見送って、さっきまでりせちーが座っていた場所に座って名前ちゃんを見る。 どうして彼女はこんな時に寝ているんだろう。 彼女ならどんなに疲れていても、どんなに眠たくても意地で起きているのに。 そんな寝顔は、悪いけどあんまり可愛いとは言えなかった。 何と言うか、無理矢理眠っているような感じがして。 「……堂島さんを止められても、あの子たちがやっちゃうような気がするんだ」 名前ちゃんの頭を撫でる。でも彼女は表情ひとつ変えない。 誰も聞いてない。でも僕は話す。 「感情に流されてるうちは、何でもやっちゃうんだよね。 でも、あとで後悔するんだ。 ……君もだよ、名前ちゃん」 君はいつになったら、目を覚ますんだろうね。 僕はもう気づいているよ。 |