あれから1週間、本当に苗字は関わってこなくなった。挨拶はおろか、目を合わせてさえいない。合いそうになったら逸らされるのだ。 これで良かったはずなのに、以前よりももやもやが増えてしまった。苛々する。 「苗字先輩!」 うわ、ドキッとした。声のした方を見ると大地がいた。大地は苗字と仲良いんだよな、何故か。というか、こんな近くに苗字がいたのに気がつかなかった。 少し歩いて距離をとって2人から見えないところまで行く。悪いと思いながらも聞き耳を立てる。 「よお、大地」 「最近苗字先輩、元気無いスね」 「そうか?」 「いっちゃん先輩にフラれたとか!」 あいつ何勝手なこと言ってやがる…!苗字は俺に背を向けているから表情はわからない。 「あー…そういうことになんのかな」 何言ってんの? 「市原が嫌だって言ってたからさ、前と同じに戻したの」 「いっちゃん先輩が…?」 「なんて顔してんだよ大地。別にたいしたことないじゃん」 たいしたことないって、本気かよ。あんなに構っておいて、俺に焦らせておいて。 馬鹿みてえじゃん、俺。 これ以上見ている必要は無いと思った。見なきゃ良かった。鼻の奥がツンとするのを抑えながら俺はその場を離れた。ここから遠くに行きたい。苗字から離れていたい。 「でも俺は、苗字先輩がいっちゃん先輩と仲良くなって嬉しかったスよ」 「ん…ごめん……ん?」 「苗字先輩?」 「ごめん大地」 「あ、ちょ…先輩!!」 直感、てヤツだろうな。振り返るとそこには誰もいない。でも誰かがいた気がする。 その誰かってのは、結構重要な人物な気がする。捜さなきゃいけない気がする。 どこにいるのか?知るか。適当に走っときゃ見つかる。 → |