今から俺は苗字に特攻しようと思っている。特攻と言っても、闘いを挑むわけじゃない。ここは日本だ、平和の国だ。

特攻する理由は一つ、苗字がはっきりしないことである。
問題の発言からしばらく経ったのだが、特に何もしてこない。諦めたのかと思いきや、そうではないらしく思い出した頃に話をふってくる。
はっきりしなくて苛々する!白黒つけるために特攻するのだ。


「苗字」
「何?」

振り返り様に見下ろされた。いつもはそんなに気にならないけど何故か今はそう感じた。
少し言葉に詰まったけどなんとか頭を動かす。


「あのさ、もっかい聞くけど」
「うん」
「お前、俺に何したいの?」


うわ、沈黙。
苗字は俺の目をじっと見てくる。目を逸らしたいけど逸らしてはいけない気がする。
そういえばこんなじっとコイツの顔見たことなかったかもしれない。それなりに整った顔してんだな…。
あ、と苗字の口が動いた。心臓が跳ねる。


「嫌、だったか」


そうかそうだったか、と苗字は自分の中で完結させようとして俺の話を聞こうとしない。そりゃあ嫌だったよ、でもなんか違う。言葉が足りない。違う、俺はお前が嫌なんじゃなくて、そのはっきりしないところが嫌なんだ。そんな悲しそうに眉を下げないでくれ、どうすれば良いかわかんないから。


「ごめんな、もう」


目を細めた苗字と目が合う。とても寂しそうな目で、でも慰めてはいけないような感じ。わずかに開いていた瞳が閉じられる。苗字は無理矢理に口角を上げる。



「関わらないから」




勝利宣言



あ、終わった。
いやいや何を考えているんだ俺は、これで良いじゃないか。白黒はっきりついたんだし。でも何かが違う、俺が期待していた展開じゃない。
じゃあ俺はいったいどんな展開を期待していたんだろう。



2010.07.15
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -