「市原、泣いてくんないかな…」


口に出してしまった。隣にいた大地が俺を変なものを見るような目で見た。
今のは俺もしまった、と思った。

「苗字先輩、いっちゃん先輩に何しようとしてんスか」
「別に何もしないよ」
「だって泣かせようとしてるじゃないですか」
「いや泣かせたいわけじゃなくて」


ああほら、誤解された。そんなつもりで言ったんじゃなかったんだけど。
弁当を食い終わって弁当箱を片付けていると、大地が俺の手元を見る。そんな見られたらやりにくい。


「苗字先輩、相変わらず食べなさすぎ!」
「んなことねえよ」
「そんなんだからひょろひょろなんスよ!」
「余計なお世話だ」

ゴツくなくてすみませんでした。でもマッチョになりたいわけじゃないから気にしないことにする。
大地が残りの弁当を掻き込んで、あのはっきりした視線を俺に向けた。


「苗字先輩が何するのも勝手ですけど、いっちゃん先輩泣かすのはやめてくださいね!」
「いやだから泣かさないって…」






最適な方法



「お、市原」

教室に戻ろうとした廊下で市原に会った。なんかラッキー。
市原は不思議な表情で俺を見てくる。何か顔についてるのかと思ったけどそんなつくようなことはしていない。俺は飯は綺麗に食べる。

「苗字お前さ…」
「ん?」
「Sなの?」

いきなり市原は何を言う。何がどうなってそうなった。
……大地か!!

「いや違う、断じて違う」
「でも大地が」
「俺は泣いてるのが見たいだけで、泣かせたいわけじゃないんだ」


あ、墓穴掘った。市原の顔を見てそう思った。




2010.07.11
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