「市原」


誰かが声をかけてきた。ふっと顔を上げると苗字がいた。
俺と苗字は日頃から話すような仲ではなく、ただの同級生だ。だから突然苗字が話しかけてきて驚いていた。

「昨日はお疲れ」
「おう」

苗字は一言で表すなら、でかい。大地くらい。でも大地までゴツくなくてひょろい。会話したことが皆無に近いからこれくらいの認識しかない。


「俺見てたんだ、学校サボって」
「何してんだ、おめー」

野球に興味あるんだ、少し意外だった。なんかスポーツにはあまり興味無さそうだった。



「んで」
「ん?」

「マウンドで市原が泣いてんの見た」

「はあ?」


何を言い出すんだコイツは。しかもなんかこれが本題みたいではないか。
ていうか見られた!


「そんでその…」
「なんだよ。はっきり言えよ」


うだうだと中々言わないから、そう言えば苗字は一回うーんと唸って俺を見た。






「市原が泣いたとこ、もう一回見たいんだけど」



何を言ってんだコイツは。鳥肌が立った、関わってはいけない気がする。危ない。
聞かなかったことにして席を立とうとする。逃げるが勝ちだろコレは。


「どこ行くんだ」


逃げられねえ。
どこ行くんだって、自分が危ない発言したのわかってないのか。この様子じゃわかってなさそうだ。



告白その1



「…で、具体的に何したいの」
「え、具体的?なんだろ」
「……」


2010.07.08
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