ゴールデンウイークに休みなんて無かった。
最終日くらい、なんて期待してた自分が馬鹿だと思う。
ため息をつくと、幸せ逃げるぞーって前でチャリこいでる双子の妹に言われた。だったら吸えば良いのか?

駐輪場に着いてチャリから下りる、って、ちょ、あ、やべ。





「……双子の兄」


何があったのかよく分からない。とりあえず、こけた。
バランス崩しただけ?え、そんなに鞄重かったか?
尻餅をついたまま、俺は呆然としていた。
こけたなんて信じられない。



「大丈夫か?」
「阿部……見てたのか」


いったいどこにいたのか、阿部が俺の前で手を差し出して立っていた。
サンキュ、とお礼を言ってその手を借りる。うわ恥ずかしー。阿部に見られてたとか。
周りを見ると他には誰もいない。阿部だけで良かった。

私先行くねー、って双子の妹はダッシュしていった。
残された俺は阿部と2人で歩いていく。






「さっき、なんでこけたんだよ」
「わ、わかんねえよ」
「どっか捻ったりしてねえか?」
「ケツが痛ェくらいだ」
「なら大丈夫か」


……心配してくれたのか?
そう思って聞いてみようかと思ったけど、そんな勇気無いし違ったら俺相当頭の中幸せな人になるから聞かないでおいた。

特に話題も無く無言のまま歩いている間、阿部はじーっと俺を見ていた。
なんか凄く恥ずかしくなってくる。何、俺何か変?



「……何だよ」
「いや、ちいせぇなと思って」
「そこは思ってても言わないところだろ!」


それ結構気にしてんだよ!
この年になっても双子の妹と身長同じなのとか、かなりショック受けてるんだから。
この春計ったら2ミリくらい勝ったけど。
野球部の中で唯一勝てるの悠一郎だけだもんな、あーあ。






「っわあ!?」


急に腰をつかまれて思わずでかい声が出た。良かった、変な声出なくて。
すみません阿部さん、離してください。
そんでなんでいきなりつかんだんですか。


「細いな」
「内心すげー傷ついてるからやめてください」
「ちゃんと食ってるのか?」
「食ってるよ」






俺の答を聞いてようやく離してくれた。
これ、セクハラで訴えられるかな……。








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