ご飯食べて、満足。
そんなとき監督が皆に声をかけた。
そして、速読がどうだとか講話が始まった。

「……ねむい…」
ご飯を食べると、胃に血が回って頭に血が回らない。つまり、眠い。
でも起きてないと…。

「大丈夫?」
「栄口…」
「眠いよね、俺も眠いんだ」
「うん……」

でも寝ちゃ駄目だよ、って栄口は笑顔で言った。何か、この笑顔に癒された気がする。
気付けば、悠一郎が裏返しにされたボードとにらめっこしていた。

「え、何あれ」
「1から25までの数字がランダムに並べてあるんだ」
「何で?」
「周辺視野を磨くんだって」

ふーん、とやる気なく返事すると監督がよーい…と言った。後ろでは志賀先生がストップウォッチを構えている。
あ、1から順番に指していけばいいのか。





ドン!

そう元気良く言ったのと同時に監督はボードをひっくり返した。そして悠一郎が1から順に指していく。

「……え?」
「8秒6です」

――…えっと、このタイムはどうなんですか?
監督がア然としてるってことは、速いのかな?ていうか速いんだろうね。皆ホントに指してたか、なんて疑っている。
私も目が追い付かなかったから、疑いたいんだけど……。

「目が追い付かないのよ」

そう言って監督は数字を並び替えて、孝介と水谷と西広と沖に位置を覚えさせた。
そして再び悠一郎はボードを凄い速さで指していった。

「7秒9です」
「合ってました」

2つの言葉を聞いて、悠一郎は自慢げにあってたでしょーって言った。
私は素直に凄いと褒めた。いや、私はいつも素直だ。少なくとも双子の兄よりは。

「このように!2人1組でやってみて!」
「明日の打順はタイムよかった人から選ばせてあげるよ!」




その監督の言葉に皆やる気を出したのは間違いないだろう。
楽しそうに、でも真剣に取り組んでいた。声が大きくなっているのはその証拠だと思う。

え、私?
私はその……バッティングはちょっと人並というか…それ以下……です。






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