これから試合を見るということで、ランニングで会場まで来た。
調子にのって最後、双子の妹と悠一郎とダッシュしたのは間違いだと思う。
入口を探してキョロキョロしていると、巣山が監督に試合の対戦校を聞いていた。
浦和総合と、武蔵野第一……ふーん。

人混みに混じって会場に入ると、応援が浦総側にしかいないことが気になった。
自分たちの時はこんなことにならないと良いな。
監督に連れられて三塁側に固まって座る。



「あ、篠岡持つよ」
「大丈夫だよー?」
「良いから、こういうのは男に任せれば良いの」


おそらく満タンに入ってるジャグを半ば無理矢理篠岡から奪う。
手ぶらになった篠岡はきょとんとした表情をしている。

「……なんだよ」
「え、あ、カッコイイなって思っただけ」
「………どうせ女顔ですよ」
「そんなこと言ってないよー!」



照れ隠しに帽子を深く被ってジャグを置いた。
ありがとう、と笑顔で言われたお礼に素っ気なく返して空いていた阿部の隣に座った。

「……阿部、機嫌悪い?」
「あ?」
「んな怖ぇ声出すなよ……」
「別に機嫌悪くねえよ」


そうは言ってるものの、俺の目からは機嫌が悪いように見えた。
何か嫌なことでもあったんだろうか。





「そういやさ、武蔵野に速い球投げるヤツがいるって聞いたんだけど阿部知ってるか?」
「…………いや」


会話が続かない。
思い出してしまった武蔵野の投手が気になってしまったので双子の妹に聞くことにした。
声をかけるとすぐ思い出せないらしく頭を抱えだした。
そこまで印象に強いヤツじゃなかったのかな。
ちょっと悪いことしたかも、なんて考えていたらグランドにいる誰かがこっちに来るのが見えた。






「タカヤ!」



ソイツは武蔵野のユニフォームを着ていて、フェンスを鳴らしながらそう大きな声を出した。
どうやら俺らがいる辺りに、"タカヤ"がいるらしい。
でも"タカヤ"は現れない。
あれ?そういえばタカヤって……。


「あの……阿部くん」
「は?」

篠岡が少しおどおどしながら阿部に話しかける。
あーそうだ!

「あの人呼んでるんじゃ……」


阿部はタカヤだ!
あーそうだ、すっきりした。
阿部は嫌な顔をして、まだ大きい声を出している人のところへ行った。舌打ちが聞こえたのは気のせいだろう。

それから阿部と誰かさんは話を始めた。
2人の関係が気になると皆そっちを見ている中、双子の妹はまだ考えていた。
そしてようやく諦めたのか、双子の妹は2人の方を見た。






「も、元希さん!?」


……はい?
何お前、アイツと知り合いなの?
嬉しそうに双子の妹はアイツのとこへ下りていって話し出した。
花飛んでねえか?あれ。




「榛名さんと知り合い?」

栄口がアイツのことを指さして俺に聞いた。
はるな……?


「アイツ榛名っていうの?」
「……双子の兄は違うんだね」

双子の妹が知り合いみたいだからてっきり双子の兄もそうなのかと思った。
笑いながらそう言って栄口は俺に向かって手招きした。阿部がいなくなったから、俺と三橋の間に一人分の空きがあるからだろう。
それに応じて俺は三橋の隣に座る。阿部が来たら避けりゃいーや。



「ね、双子の兄ってシスコン?」
「どこが」
「だって怖い顔してる」


眉間を指さして、栄口はそう言った。
言われてみると確かに眉間にシワが寄っていた。
でもシスコンってのは認めないから。

気付いたら話は終わってたらしく、阿部が戻ってきた。
詰めていた分の席を空けて、俺は前の場所に戻った。
でも阿部は空けた場所へは座らず前に座った。


そして榛名と自分の関係の話を始めた。







2009.05.05
to be continued…





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