「ま……疲れるもんは疲れるんだけどね」 「お疲れー」 思わずその場に座り込んだ私に千代ちゃんが笑顔で言ってくれた。 悠一郎と双子の兄はキョロキョロと何かを探している。 くっそー、やっぱり差ついちゃうなあ。 「どこ対どこすか?」 巣山が監督に聞いて、監督は浦和総合と武蔵野第一と答えた。やっぱり! わくわくしながら中に入ると、浦総と武蔵野の応援団の多さの違いが気になった。浦総の方が凄い多い。 西浦が試合したときこんな風になったらいやだなぁ……頑張って人集めよ! そして3塁側に皆で座って(ちょっとしたこともあったけど)球場を眺める。 花井と沖と水谷と孝介がどっちが強いか、なんて話してるのが聞こえ私も参加しようと4人のところへ行った。 「武蔵野は野球よりサッカーだもんね」 「そうそう。サッカー部の応援したくて武蔵野行く女いたよ」 「あーいるよなー」 「そーなの?」 「おめーみたいな野球バカには関係ないか」 ニヤッと笑ってそう言った孝介の頭を私は叩いた。 間違ったことは言ってないんだけど、さ。 何かムカつく。 「武蔵野に注目されてる投手がいるって、お前言ってなかった?」 双子の兄が上の方から言う。振り向くと、誰?と続けられた。 えっと…… 思い出そうとその状態で考える。 誰だっけなー、確か速い球投げる感じだったような……。 「タカヤ!」 フェンスを鳴らせながら誰かが大きい声で言う。 それに4人がビクッとした。ちょうどまずいことを言ってしまったらしい。 タカヤという人を呼んでいる。でもタカヤは彼のトコに現れない。 まあ、私としてはそんなことよりも武蔵野の投手を思い出す方が大切で。 彼に背を向けて必死で思い出そうと頭を抱える。 えっとー……はる…の? 「タカヤてめー来いっつってんだろ!」 足音が聞こえた。 顔を上げると、阿部が彼に向かって歩いていく。阿部ってタカヤなんだ。 皆も阿部がタカヤってことを知らなかったらしい……て、水谷と花井は同じクラスでは。 彼と阿部が何か話している。どうやら2人は知り合いらしい。 流石に気になってきた私は振り向いて、彼を見た。 「も、元希さん!?」 そこには高校に入ってからあまり会う機会が無かったけど、随分見知った人がいた。 通りで聞いたことがある感じの声だと……。 「おー、双子の妹」 「え、元希さん武蔵野なんですか?」 「今更かよ」 わー、知らなかった! あ、じゃあ注目されてる投手ってもしかして元希さん? そういえば、何たらモトキだった気がしてきた。 「榛名!」 「わあってるよ!」 危うくこのまま話し込みそうな雰囲気だったのを感じたのか、一緒にいた捕手の人が元希さんを呼ぶ。 「双子の妹、夜メールするわ」 「は……はい!」 「タカヤ、お前俺の球マトモに捕れるようになるまで半年かかったよな」 少しイヤな感じに、元希さんは阿部に向かって言う。 2人はバッテリーだった……? 「よく見とけ」 そう言って話は終わり。 元希さんは捕手の人と一緒に戻っていったし、私は4人のトコへ阿部も三橋のトコへ戻った。 バチ、と孝介と目が合った。 「知り合い?」 「元希さん?ちょっとね」 「……ふーん」 孝介はつまらないと言うような顔をした。 え、私何かした? 「ちょっと集合ー!」 このあと、とんでもないことが待っていることを私は知らなかった。 to be continued 2009.03.26 |