俺は悠一郎のタイムを抜かすことだけを考えて意気込む。 パネルとストップウォッチを持っている泉は、そんな俺を見てため息をついた。 「いいか?」 「もうちょい待って。集中する」 がやがやしている状況で集中できるかって言われたら、できないに近いんだけど俺は集中しようとする。 よし、良いぞ。 スタートと同時にパネルが返される。 いつもより声を張って、25と言い終えた。タイムは!? 「……よっしゃー!!」 7秒8! 悠一郎のタイムを抜かしてやったぜ。たった0.1秒の差だけど抜かしたには変わりない。 驚きの声は悠一郎が1番大きかったけど、リアクションは花井が1番大きかった。 何でそんな速いんだよ、とか何なんだお前なんて言われながらもみくちゃにされた。皆俺よりでかいからな…。 「巣山俺もう3回やっちゃった!?」 悠一郎は声の大きさを変えずに巣山に聞く。まだチャンスがあるのなら俺のタイムを抜かすつもりなんだろう。 でも現実そんなに甘くない。 「ああ」 「くっそー!!」 結果、俺が1番だった。 (でもあのタイムをもう一回出せる自信は無い) |