「お疲れ」

また、夜の11時くらい。
当たり前のように孝介は隣にいた。
明日の試合に備え、早く寝るのが普通だけど、妙に興奮して仕方なかった。

「双子の兄には驚いたな。あの田島を抜かすなんて」
「双子の兄は、バッティングセンスだけがずば抜けてたから」
「だけ?」
「だけ」

褒めてるようで、どこかけなしている私の言葉に孝介は笑った。
でも本当の話だ。
双子の兄がどうして捕手を選んだのかは分からない。バッティング以外は人並みだったから何を選んでも同じだったのかもしれない。


「俺は、お前も凄いかと思った」

「天は二物を与えずってね。私は投げることだけで精一杯」
「そういうもんかなー…」

そういうものだよ。って私は笑いながら言った。
攻撃の、双子の兄。
守備の、私。
私たちは正反対だった。だからやってこれた。
それに悠一郎も入って、バランスが取れていたんだ。
たった一つの問題を除いては……。




「……私はね、別に才能とかはいらなかったの」

少し声が小さくなったからか、孝介は背中を丸めた。
別に聞いてくれなくてもよかった。ただ、声に出したかっただけ。

どれだけ球が遅くても、どれだけバッティングができなくてもよかった。






「男であればよかった…っ…」


結局、男でなければ公式試合には出られないんだ。
どれだけ練習したって、それを認めてくれる場所は仲間内だけでしかない。
私は、試合に出たい。そして勝ちたい。

みっともなく声は震えていて、私はついに泣いてしまった。
どうして私は女だったんだろう。双子の兄と一緒に生まれてくるなら、同じように生まれたかった。
孝介は私が泣き止むまで、優しく背中をさすってくれた。







2008.12.23
to be continued…





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