今日は4年生と合同演習。2人1組を作って巻物を守って奪うというもの。
俺は半ば強制的に作兵衛と組まされ、現在森の中を疾走中。強制的とは言っても嫌では無かった。ほら、自分が言うより先に言われたものだから。


「わりぃな」
「何が」
「俺と組むことになって」
「まーた、作はそんなこと言う」

気にするな、と作兵衛の頭をぐしゃぐしゃにする。頭巾がずれるだろ!と顔を赤くしながら作兵衛は大きな声を出す。
それを笑っていると人の気配がした。



「作、いた」
「…おう」
「行くか」

作兵衛が頷いたのを見て、巻物を自分の懐に入れた。
相手もそれなりに警戒していてピリピリとした空気が肌に突き刺さる。作兵衛が動き出したのを合図に俺も動き出した。


「ッ誰だ!」


相手の声とほぼ同時に作兵衛が相手の懐へと入り地面へと押し倒した。俺は、その動作を呆然として見ていたもう一人の背後に回って首に苦無を当てた。

「富松に…苗字…っ」
「巻物を渡せ」

ツーッ、と首に当てた苦無を動かす。紅いものが流れた。それを見て、作兵衛に押し倒されたほうが降参して懐にある、と言ってきた。軟弱ものである。



「ひとつめ、だな」
「今の奴ら弱すぎ」
「だな」


さあ次、と辺りを見回すと何となく見覚えのあるヤツが見えた。もう一回、よく見ると確信した。
数馬だ。
何故か一人でキョロキョロと見回している。若干、落ち着きも無い。どうして一人なのだろう。もしかしたら作戦かもしれない。作兵衛に目線を送ると首を横に振られた。

「あれは演技じゃない。数馬、何か困ってる」
「数馬って誰と組んでたっけ」
「藤内は綾部先輩に連れてかれたから…三之助だ」


「数馬!なんで一人なんだよ!」


数馬が一人で困っていて、組んでいた三之助がいないってことは大体見当がつく。数馬を呼ぶと、数馬は少し安心したような顔で俺たちに手を振った。

「作兵衛、名前、どうしよう…」
「三之助は?」
「どっか行っちゃった…すぐ捜しに行こうとしたんだけど、仕掛けてあった罠にひっかかっちゃって…」


どうしよう、ともう一回数馬は言ってその場にへなへなと膝をついた。

「あいつ…!捜しに行って…」
「駄目っ!!」
「数馬…」
「作兵衛は駄目…っ、名前…!」


こんなときでも数馬は作兵衛に無理をさせまいとしている。でも作兵衛は今にでも三之助を捜しに行きたさそうにしている。
俺はどうすれば良いんだろう。


「名前…っ」



作兵衛が走り出さずにいてくれてるのが唯一の救い。
三之助のことは心配だ。作兵衛が心配しているのもわかる。そして数馬が作兵衛を心配しているのもわかる。一週間、そういう約束だったし。




「作兵衛、孫兵のところ行こう」
「名前…っ!」
「孫兵に応援を頼もう。それと藤内。数馬は三之助を捜しに行ってくれ」
「う、うんっ!」


「名前!俺が捜すってんだろ!」
「駄目だ。みんなに任せろ」
「名前っ!!」



作兵衛が必死に抗議する。俺は聞こえない振りをして孫兵を捜す。
いつ作兵衛が俺を嫌いになって走り出すかわからないので手は握っていた。

これが俺の出した結果だった。



2010.05.03
五日目
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