孫兵の薄情者。毒虫野郎。 べそべそ泣きながら俺は自分の部屋ほ向かっていた。全然泣き止む気配が無い自分が醜い。幸い、誰にもすれ違わなかった。 「さ、くべ」 「…泣いてんのか?」 部屋に入れば委員会を終わらせたのであろう、作兵衛がいた。しまった、まだ終わってないと思っていたのに。 一応首を横に振って否定してみたが説得力は無く、作兵衛は目を細めて俺を睨んだ。 「……俺のせいか」 「、さくべ」 「そうだよな…俺の世話係とかふざけたもん、やらせられちまったせいで」 「さく、違う」 「やっぱり数馬に言ってやめさせ…」 「作兵衛っ」 部屋を出て行こうとする作兵衛を止める。俺の話を聞いてくれ! 「作兵衛、俺、嬉しかったんだよ」 「…え」 「作兵衛係なんてさ、ふざけてるって思ったけど。作兵衛と一緒にいれるのが嬉しかった。いつも作兵衛、左門と三之助のことでいっぱいだから」 「俺、余計なことしたよな。ごめん」 ありがとう。三日だけだったけど楽しかった。 行っていいよ、と作兵衛を促すと作兵衛は眉間にシワを寄せて俺を見る。襖にかかっていた手が下りた。どうした?と聞く俺はまだ泣いていた。いい加減に泣きやみたい。どうして泣いてるのかも、今ではわからなくなった。 「…俺は、俺のせいで名前がやりたいことできなくなんのが嫌なんだ。昨日だって、せっかく休みなのに委員会手伝うとか言い出すしさ」 「作兵衛…」 「だからっ…!」 俺は作兵衛の手を引く。作兵衛はあっさりと俺の胸へと飛び込んだ。そして抱きしめた。 「俺はやりたくないこと平気でやれるほど器用じゃないよ」 「名前…」 「俺、まだ作兵衛係やってもいいかな」 「嫌なことは嫌って言えよ」 「うん」 「めんどくなったら、すぐやめろよ」 「うん」 「…いいの?」 「うん」 そう答えれば作兵衛は俺の背中にぎゅっと腕を回して抱きしめた。更に俺は強い力で抱きしめる。 涙は止まっていた。 ぐー… 「…」 「…」 「……作?」 「…腹減った」 「…っ、ははっ!」 「わ、笑うな!」 「飯行こうか」 「おう」 なんだかんだあったけど、作兵衛係は続行です。 2010.04.08 弐 |