「苗字先輩だー」 「はにゃー、本当だー」 「苗字先輩…」 ちなみに俺、図書委員です。今日は当番じゃないからこうやって用具委員会に顔を出すことができる。 用具の一年が、珍しいのか俺の周りに集まる。あ、なめくじは出さないで…。 「なんで苗字がいるんだ?」 「実は俺、作兵衛係になりまして」 「作兵衛係?」 なんだそれ、と食満先輩と一年が首を傾げる。ちょっとどうしてそんな同時に。 作兵衛はとっとと道具を取りに逃げてしまった。 「まあ、かくかくしかじかで…」 「ふーん。そりゃ賛成だ」 「だったら委員会休みにしてくださいよ」 「してやりたいが残念ながら無理だ」 聞けば体育委員会がバレーをして塀を壊してしまったらしい。三之助も大変だな。 「俺も手伝いますよ」 「お、いいのか」 「名前は帰ってていいよ!」 道具を抱えた作兵衛がそう言った。ずいぶんとたくさん抱えている。手伝おうと手を伸ばそうとしたら、もう一回言われた。 「作兵衛…」 「名前は休みなんだから休んでりゃ良いだろ。わざわざ休み潰すことねえよ」 「…そっか。分かった」 作兵衛係になったとはいえ、作兵衛の迷惑になってはいけない。委員会は食満先輩がいるから大丈夫だろう。 すごすごと俺は部屋へと戻った。あーあー、加減って難しいなぁ。 「…ただいま」 委員会は早く終わった。正確に言えばまだ終わってないんだけど、食満先輩に帰された。残るって言ったのに「苗字の気持ちも考えてやれ」って。そう言われちゃ帰るしかなくて、今帰ってきた。 これでも障子の前でしばらく悩んだのだ。名前が怒っていたらどうしようとか、考えれば考えるほどキリが無かった。 そうしてようやく決心して俺は部屋に入った! 「おう、おかえり」 あんだけたくさん考えたのに名前はいつも通りだった。拍子抜けだ。なんとなく謝るときを逃してしまった気がした。 「飯行こうぜ、腹減ったろ」 「あ、うん…」 後悔でいっぱいだった俺は、なんとなく飯がいつもみたいにうまく感じれなかった。おばちゃんの料理だ、うまいはずなのに。 あーもう、どうしよう。 2010.04.02 弐 |