「……なあ、兵助。暇じゃないか?」


 今日も恒例の朝のやり取りをしようと意気込んでいると、名前さんが不意にそう言った。どういう意味でしょう、と素直に尋ねた。今日は平日というヤツで、名前さんは普通に学校に行く日であるのに。平日は決まって留守番なのだ。


「いや、あまりに引きこもりすぎて暇そうだから」
「まあ…暇ではないといえば嘘になりますが」
「だよな。よし、大学行くか」
「聞いただけですか」


 暇なのを確認して自分だけ大学へ行くとは、名前さんの薄情者。俺をからかっただけだったんだ。
 いってらっしゃい、と言うと名前さんはキョトンとした顔で俺を見た。その顔も可愛くて好きですが、どうしましたか。


「兵助も行くんだよ」

「……はい?」



 ほら、準備して。急かされて事態を理解しないまま俺は外に出ていた。名前さんはといえば楽しそうにしている。いったい何を考えているんだ。


「大学はな、たくさんのヤツがいるから違うヤツがいたってバレやしないよ」
「そうなんですか?」

 忍術学園では考えられないな、小松田さんがそれを許さない。入門届にサインをしてしまえばいいのだが。



「まあ、そこそこに暇つぶしにはなるはずだ」
「はあ」




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