今日は名前さんが"大学"へ行った。
名前さんは家を出る前に俺に幾つか言っていった。


「呼び鈴が鳴っても出るな」
これはわざわざ鳴らして呼び鈴とは何か教えてくれたので分かった。

「ガスコンロには触るな」
ひょいと捻ったら火が出てきた。これにはとても驚いた。


あと細々と言っていたが、この2つが重要だと言っていた。あとは自由にしてていい、と言われた。




「…とは言っても、何もすることがない」

ここには忍たまの友も無ければ手裏剣があるわけでもない。鍛練はできない。ああでも筋トレだったらできるか。
そうだそうしよう。




ピーンポーン


呼び鈴が鳴った。もう外は暗くなっていた。名前さんに出てはいけないと言われたので居留守を使う。
ガチャガチャと音がした。続いて扉の開く音。
名前さんが帰ってきたんだ!
玄関へと向かうと、そこにいたのは名前さんではなく


「え?」


布団だった。真っ白い布団が俺の目線にいた。なんで布団が。

「おー、これが噂の居候か!」
「良いから早く置け」

そんな会話のあと、布団は俺の視界から外れ、知らない人と名前さんが現れた。知らない人は名前さんよりも身長のある人だった。

「わざわざ悪かったな」
「いやこれくらい、どうってことないさ。いつ飯おごってくれんの?」
「誰がいつお前に飯おごるって言ったよ」
「え、じゃテレビ買ってくれんの?」
「牛丼食いに行こうか、明日にでも」

あはは、と笑い合って知らない人…名前さんの友人だろう。名前さんの友人は帰っていった。名前さんはしばらく見送ったあと、扉の鍵を閉めた。


「ただいま」
「お、かえりなさい」
「騒々しくてごめんな。布団運んでもらったんだ」

よいしょ、と名前さんは布団を持ち上げて、俺は名前さんの前を歩いて居間へと向かう。
布団が手に入ったのか。これで名前さんが床に寝なくて済む。


「名前さん」
「ん?」
「あの人は友人ですか?」
「お?、おう。少しやかましいけど良いヤツだよ」


きゅんと胸が苦しくなった。呼吸がしにくいわけではない。ただ苦しくなった。
名前さんはあの人といたら楽しそうに笑うんだ。ふんわりと、笑うんだ。



「兵助?」


名前さんに抱き着いて、さっき運んだばかりの布団に倒れ込む。押し倒すっていうんだろう。

「へーすけ、」
「俺、寂しかったです」

名前さんの胸に顔を埋めて、名前さんのにおいをいっぱいに嗅いで抱きしめた。
鍛えている俺たちとは違って身長はあるけれど細い身体だった。

「一人で、何していいかわかんなくって、名前さんいないし。寂しかったです」
「…そっか」

大きく優しい手が俺を撫でる。やっぱり名前さんの手は綺麗だ。殺生なんて知らない手。


「もう少し、帰れるまで頑張れ」

目をつむる男


2010.04.14
ネタ提供いただきました!
友達に嫉妬するっていただいたとき、ニヤニヤしましたね。嫉妬大好きなんです…!


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