「なんですかここ、合戦場ですか」

「なわけあるか。合戦場に女子供がいるか」



ショッピングセンターに兵助を連れていったらまずこの感想だ。道中いろんなことに驚いて俺にたくさん聞いてきて楽しいな、なんて思っていたら合戦場って。お兄さんびっくりしたよ。


「じゃあ何のためにこんな人が集められてるんですか。合戦ではなく」
「みんな買い物に来てるんだよ。自分の意思で」
「全員…!」


そんなに買い物する必要があるのか、と兵助は眉間にシワを寄せて考え出す。人それぞれだと言って服屋へ連行。放置していたら兵助動かない。



「動きやすい方が良いよな」
「はい」

「ボタン、わかる?」
「わかりません」
「チャック」
「わかりません」


じゃあTシャツだ。Tシャツが置いてある棚へ向かう。安いとこ。

「んじゃ、こっから好きなの選んで」
「…なんでもいいんですか?」
「おう。この棚なら」

安いから。そうは言わなかった。
兵助は恐る恐る服を覗き込む。触ってもいいと言ってやれば、服を広げデザインを見出した。


「あ、これ良いな」
「これですか?」
「うん。俺も買おうかな」
「じゃあこれにします」

え、俺が買おうとしたのに。
お願いします、と渡されてしまった。サイズが俺の一つ下なのを確認してカゴの中に入れた。

「名前さんは買わないんですか?」
「え、や、兵助買ったでしょ」
「だって気に入ったんじゃないんですか?」
「気に入ったけど…」

兵助はじっと俺を見る。えっと、気に入ったのならば買えば良いじゃないかと言っているのか。
お揃いになるんだけど。そんなの兵助は気にしていないようだ。


「……んじゃ買う」

そう言って同じもののサイズ違いをカゴに入れれば、兵助は少し笑った。
大丈夫、ここ2枚で安くなるとこ。




「手」


見るもの全てが珍しい兵助はほっといたらどこに行くかわからない。正確に言えば兵助は止まって、俺が気づかず先に行ってしまうんだけど。
これまで何回はぐれたことか。幸い、あの髪の長さが目立つからすぐに見つかるんだけども。
もう捜すのも疲れた。
荷物を持っていない右手を兵助に出した。


「はい?」
「迷子になるから。掴んで」
「え」

兵助は俺の顔と差し出した右手を交互に見る。ほら早く、引っ込めちゃう。


「……じゃあ」
「よし」


「名前さんの手は綺麗ですね」
「そうか?」
「はい。俺とは違います」




僅かに微笑んだ男


2010.04.07
ネタ提供いただきました!
内容薄い…手繋いでもらいたかったんです。

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