「…名前さん、本当に大丈夫ですか?」 「ちょっと失敗だったかもなあ」 大学に入ったはいいが、すれ違う人に見られる。恐らく原因は兵助の異常なまでの髪の長さだ。女ならまだしも、男だしな…。 「や、やっぱり俺帰ります」 「ここまで来たんだ。少しくらい居てみよう」 「でも名前さん、授業があるでしょう」 「今日は午後からなんだ」 兵助を連れてくるために、午前から来たんだと言えば兵助は渋々といった様子で、それなら仕方ないと折れた。 「軽く見学して帰ろう、な?」 「そこまで言うなら…」 決心が鈍らないうちに兵助の手を引いて前に進む。どうして兵助を連れて来たかって、冒頭の通り暇そうだったからだ。家の中にずっと居たら体も鈍るだろうし。 「苗字、その子誰?」 「俺んちの居候」 「へえ。次出る?」 「出ない」 色々なところを回ってる間、たくさんの人が名前さんに話しかけた。男の人だけでなく女の人も話しかけていた。仕方ない、名前さんはそれだけ魅力的だ。現に自分も名前さんに惹かれているのだから。 わかってはいるんだけど、胸が苦しくなって思わず名前さんの袖を引っ張った。 「…兵助?」 「……名前さん…」 「疲れたか?」 「…はい、少し人に酔いました」 「そっか。じゃあ帰ろう」 連れ回してごめんな、と言って名前さんは俺の手を引いて歩き出す。俺の具合が悪いからか先程より歩く速度を落としてくれていた。優しい。 大学ってところはすごい場所だった。名前さんが楽しく通ってるのもわかった。 気をきかせたつもりの男 でも、俺じゃない人と楽しそうにしていることは知りたくなかった。 2011.01.27 ネタいただきました、主人公の学校に行くです。以前の話と少し被ってしまいましたが…。 |