「なんで小さくなったんでしょうね」
「んー…」
「……すぷーん、でしたっけ。いりますか?」
「…頼む」


小さくなった名前さんは箸をうまく使えず葛藤していた。
目の前のご飯を食べるのに必死で、自分が小さくなったことについてはあまり考えていないようだ。それで良いのだろうか。

「不安じゃないんですか?元に戻れる保障も無いっていうのに」
「何とかなるだろ」
「なんでそんな…」
「心配してどうにかなるものでもないだろ」

まあ確かにそうだけれど。
なんとか食べきることができた名前さんは、ごちそうさまと手を合わせた。幼い姿だと何気ない動作も可愛く思える。本人には言わないけど。

「兵助、洗い物」
「あ、はい」

流しの前に立つ俺の隣に椅子を持ってきて、そこに名前さんが乗る。そして俺が洗ったものを名前さんが拭いていった。
名前さんはやはり不便なのか、眉間にシワを寄せている。


「名前さん」
「ん?」
「シワ、寄ってます」
「ちべたっ…うわ…っ」

とん、と眉間を人差し指でついた。洗い物で水がついていたので冷たかったらしい、名前さんは目を閉じた。するとバランスを崩したのか名前さんは後ろへと倒れそうになった。どうにか手を伸ばす、泡ついてるけど良いよな。名前さんのほうが重要!



「……ありがと」
「いえ」

なんとか名前さんの背中まで腕を伸ばすことに成功した。
ぽすっと腕の中におさまった名前さんは目をぱちくりさせて現状を理解しようとしていた。大丈夫だろうか。


「………ちょっと寝るわ、あとよろしく」
「はい」


ふらふらと名前さんは部屋へ戻っていった。とりあえず洗い物を終わらせよう、と体制を立て直して再開する。

小さかった。いや、幼児に戻っているのだから当たり前なんだけど、小さくなっていても名前さんはいつも通りだったから、ただ目線が下がった程度に感じていた。
でも、あんな小さかった。あっさりと腕の中におさまってしまうほどに。



「それって怖いなあ…」


色々考えてるうちに洗い物は終わって、他にやることは無いかと考えるけど思いあたらない。がすこんろのつまみが回ってないかを確かめて、鍵がかかってるか確かめて、よし大丈夫。

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