「名前さんお帰りなさいっ!ご飯にしますか?お風呂にしますか?それとも」

「飯」


言わせねーよ、と小さく呟いて中へ入る。そんなお決まりなの男じゃなくてお姉様に言われてみたい。
最近、家にいる間は暇なのか兵助が飯を作ってくれるようになった。とは言ってもガスとか怖いから俺が帰ってきてからだけど。それまで下ごしらえとかしてる。


「名前さん、食器並べてください」
「んー」
「ご飯抜きにしますよ」
「そりゃ勘弁」

言われるままに食器を出していく。ご飯盛ってほしいとも言われたからそれもやる。兵助はといえば今日は機嫌が良いのか鼻歌なんか歌っちゃってる。



「なんか良いことあった?」
「名前さんが何も言わなくても早く帰ってきてくれました」


そう微笑む兵助を見て、なんとなく照れた。そんなことで機嫌が良くなるなんて。
そっか、と素っ気なく返事をする。素っ気なくても兵助は気にしない。

やがて夕飯が全て食卓に並んだ。いただきます、と交わして味噌汁に手を伸ばす。今日のメニューは野菜炒めだ。


「どうですか?」
「旨い」
「良かった」


兵助はこうやって必ず感想を聞いてくる。もちろん答えはいつも、旨いしかないんだけど(たまに大失敗することもあった)
不思議なことに俺と兵助の味の好みは似ていて変に口出しする必要も無いので有り難かった。


「この野菜炒め、すげー好き」
「本当ですか?」
「ん。好み」


ふわり、と微笑む兵助を見てまたなんとなく照れる。最初はあまり表情の変わらないヤツだな、と思っていたけどそんなことはなくて、よく見ればころころと表情を変える。
トリップしてきたのが兵助で良かった。もっと気難しいヤツだったら俺はきっとストレスで胃痛持ちになっていたことだろう。
それにしても、野菜炒め旨い。




「こんな飯が毎日食えるって幸せだな…」
「え?」






零した男



2010.04.22
ネタ提供いただきました!
無意識に新婚さんみたいな会話、を目指して。
最後の台詞に全て込めました。やっぱり新婚さんはご飯ネタかなあ、と。あーんはできませんでした…。

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