「、だーかーら!!俺は大学行かんきゃならないの!」

「嫌です行かないでください」

「行かんきゃ単位落とすから!」

「そんなもの知りません」

「それどっちの意味!?」



朝からこんなんだ。
兵助は俺の鞄を掴んで俺に行くなと駄々をこねる。けど俺も進級かかってるし行かないわけにはいかない。
なんて言うか、兵助大分わがままになってきた。

「兵助、俺行かなきゃ」
「……どうしてもですか?」
「うん」
「…早く、帰ってきてくれますか?」
「…頑張る」
「そこは即答してください」



玄関でこのやり取りをすること20分。ようやく家を出ることができた。
どうしてこんな罪悪感を抱かなきゃなんないんだ…!
ともかく兵助の要望通り早く帰れるよう努力することにしよう。

そう思って、友人たちからの誘いを全て断って家に帰った。どれも重要なものじゃなかったから大丈夫だと思う。
家に帰ると兵助は小さくなって布団の中にいた。



「兵助、ただいま」
「おかえりなさい」


声をかけると兵助は起き上がり、少し微笑む。
俺が手提げ袋を見せると、兵助はこてんと首を傾げた。


「どら焼き買ってきたから食べないか?」
「いただきます」



兵助を居間に待たせて、俺はお茶を煎れる…はずだった。
だったというのは、居間で大人しく座ってるはずの兵助が俺の隣にいるのだ。


「兵助」
「はい」
「座ってていいんだぞ」
「大丈夫です」

いや、大丈夫かどうかって問題ではないのだが。どうもやりにくい。
お湯が沸くにはまだかかるし、どうしたものか。

「名前さん」
「ん?」
「俺、お茶は熱いほうが好きです」
「…そっか」


結局、お茶を煎れるまで兵助は俺の側を離れなかったし、食べ終わったあともそうだった。夕飯の支度のときもまあ、やりづらい事この上無かった。



「名前さん」
「何?」
「一緒に寝てください」
「却下」




まったく、兵助は何がしたいんだか。


不思議な男



2010.04.19

ネタ提供いただきました!
引っ付き虫な久々知、です。きっと久々知は料理してる人の手のあたりをじーっと見てくるので、やりにくい事この上無いです。

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